2018年4月26日木曜日

本は無慈悲な旅を所望

ハインラインの長編SFを買ってから数ヶ月経つ。まだ読んでいない。

定期購読の雑誌(「胃と腸」とか「本の雑誌」)、マンガ、タイムラインでおすすめされた本などを順番に読んでいると、あっという間に1か月くらい過ぎていく。



この数か月間、実は長期の出張がほとんどなかった。

釧路出張は、飛行機のフライト時間が40分ちょっとしかないからまとまった本を読む気がしない。

一度だけ岡山出張があったのだが、このときは行きの飛行機の中でもずっと講演のプレゼンを直していたので本を読めなかった。

ちょっとだけ空いた時間もあったのだが、スマホのKindleで「ぱらのま」とか「ゆるキャン△」を読んでいたら過ぎ去ってしまった。



できれば東京より西の地域に月3回くらい出張したい。そしたら、フライト時間がいっぱいあるから、もっと長編の本が読めるだろうなあ。



自分でこういうことを考えていて、いや、ま、別に、家で寝る前とかに読めばいいのでは? と自らつっこみ、ここのところ少し試してみた。寝る前の読書。

だめだった。寝る前に読書をするとそのまま寝てしまう。

この時間に読書をするのはやめろ、そのまま睡眠にあてなさい、と肉体が判断している。

これに対し、飛行機の移動時間は、「読書にあてたらいい。それはよい。」と、肉体がお許しくださっているのだろう。

肉体さまが他におゆるしくださるような、本を読んでよいタイミングというのは、いつだ。




以前に野田知佑氏の話を書いたかもしれない。彼はエッセイ「ユーコン川を筏で下る」の中で、ユーコンのほとりでジャック・ロンドンの伝記「馬に乗った水夫」を読んでいた。ぼくはそのシーンがとてもかっこいいなあと思い、自分でも「馬に乗った水夫」を購入して読んでみた。しかし、翻訳はそこまで硬くないのだけれどもあれはおそらく原文が硬いのだろうな、移動時間が極めて短い「仕事旅」の最中にはなかなか読み進めなかった。読み終わるのに1か月以上かけてしまった。

そのとき思った。そうだ、ぼくもゆっくり川下りをすれば本が読めるかもしれないと。読みたい本を読むために、出張のときに毎回川下りをするというのはどうだろうか?

どうだろうか? じゃない。そんな出張はありえない。しかし、川下りとまではいわないが、出張の際に似たような「スロー旅」をやっているドクターにはしばしば出会う。

たとえば新潟にいる拡大内視鏡の権威は、講演でどこかに呼ばれるたびに、旅程の一部(特に帰路)を鈍行で組み、3時間とか6時間という移動時間をわざわざ用意して、渓谷とか海沿いなどをゴトゴト走る列車でゆっくりとした時間を過ごして癒やされるのだという。釧路で講演があったら、翌日は釧路からすぐ帰らずに、釧網線というローカル鈍行にのって網走まで移動し、女満別空港から帰る、といった塩梅だ。すばらしい。ぼくもそういう立場になりたい。出張のたびにゆっくりと鈍行列車に乗りながら本を読むなんて最高だ。

最高だ、が、それをやるには結局、偉くならないといけない。ぼくは本を読むために偉くなろうと思う。