2019年3月15日金曜日

病理の話(304) 時空間的遠隔操作プログラム

先日、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウにタッチダウンしたニュースを見た。すごいねあれ。

だってとんでもない遠隔操作でしょう。

着陸時のプログラムを途中で変更した、とか言ってるけど、その変更したプログラムを届けるのに、どんな魔法を使ってるのか検討がつかないよ。たぶん電波かなんか飛ばしてるんだろうけど。

だってぼくら、ちょっと地下に入ったらスマホ圏外になったりする暮らしをしてるわけじゃん。

星の向こうだぜ。圏外とかどうやって解決してるんだろうな。



それに、ソフトウェアのプログラムは多少なりとも書き換えられるかもしれないけど、ハード……本体のほうは、一度宇宙に飛ばしちゃったらもう変更しようがないじゃない。

どうするんだろうな。たとえば途中でアンテナが一本折れたりしたらアウトでしょ。太陽光とか紫外線とかの影響で表面にダメージ受けてもだめじゃん。

はーすごいなあー。ありとあらゆることを予測しておいて、備えて、最初に作っておいて、送り出したらあとはもう最低限の制御しかできない状態で、小惑星の砂とか小石を拾ったりしてるんだもの。

たいしたもんだよなー。




……ってことを、人体の中で、あらゆる細胞がやっている、と考えられる。

父親と母親から受け継いだ受精卵には、「すべてのプログラム」があらかじめ入っている。この受精卵ひとつが、最初は母親の胎内で庇護を受けながら、あるとき、世に放たれる。生まれたら周りの人はさまざまに、かいがいしく、世話をやく……。

けれどもさあ。

そのお世話はさあ。人体のプログラムを動かすためでは、ないじゃん。

栄養をあたえたり、熱や物理的ダメージから守ったり、排泄を手伝ったり、というメンテナンスはできるよ。周りの大人ががんばってさ。

それでも、たとえば、脳を発達させるとか、手が器用になるとか、胃腸が強くなって食べ物を消化吸収できるようになる、みたいな、「体内でプログラムがうまく作動して、何かを成し遂げること」については、どんなすごい大人であっても、基本、手助けができない。

ぜーんぶ、生まれ持ったプログラムである「DNA」が成し遂げることなんだよな。




そう考えると生命というのは、はやぶさ2よりもさらにちょっとすごい、「遠隔制御前提の超絶プログラム」を搭載しているってことになる。

しかも何十年も継続稼働するんだからたいしたものだ。




で、その、プログラムに、多少なりともエラーが出てくるというのは、これはもうしょうがないことだ。加齢と共に「DNAのプログラムエラー」の結果、「がん」という難儀な病気ができてくることは、ほんとに、悲しいことだけど、避けられないことでもある。

ただそのプログラムエラーすら、人間は今や、なんとか修正できないものだろうかと、考えているのだけれども……。