2019年6月5日水曜日

むきの反対はふむきではなくゆうき

香川県観音寺市にある「大阪大学微生物病研究会(阪大微研)観音寺研究所瀬戸センター」というところにいる。

観音寺市は、香川県の左端にある。ほぼ県境だ。愛媛県がすぐそこ。

そんな、香川のはしっこの海に近い場所に、妙にきれいで豪華なビルが唐突に建っている。

今いるのは、講師控室がわりの小さな会議室だ。3階にある。写真だとなんだかそんなに高さがない建物みたいにみえるが、視界の後ろ側にニョキっとビルがもちあがっている。



早く着きすぎたので、ポケットWi-Fiのスイッチをいれてパソコンをたちあげた。

1時間後にはじまる研究会で講演をするが、予行もしたのですることがない。持ってきた本は1冊をのぞいてすべて読んでしまった。帰りの飛行機に1冊とっておきたいからここでは読まない。急ぎの原稿は昨日の夜に大急ぎで終わらせてしまった。こんな空き時間があるなら、今書けばよかったな、と少し後悔している。

暇をもてあましたのでブログを書くことにした。最近はあまり旅先でブログを書かないようにしているのだけれど。なんだかあとで読み返すと、わかってしまうのだ。旅先ではメンタルの一部が過敏になっているせいか、文章も少しナイーブになっていて、ぼくはあまりそういうのが好きではない。もっと淡々と書けるようになりたい。無理だというのはわかっているけれど。




このビルはきれいすぎるなあと思いスタッフにたずねてみると、せいぜい5年しか経っていないのではないか、と言われた。ここは国内のインフルエンザワクチンの6割が作られているといううわさもある。水も空気もきれいだからもってこいなのかな。そういうのは関係ないのかな。

それにしても建物がきれいすぎる。

研究所なのかと思ったが建物の多くは実質「ワクチン工場」なのかもしれない。

なんだかいろんなメーカーの思惑が入り込んで建てられた「殻」という空気がある。

「具体的に働く人たち」の気配が希薄だなと思う。まあ土曜日だからなあ。

研究所という場所が365日不夜城であるべきだ、というのは、枯れた中年の固定観念なのかもしれない。土曜は閑散としていていいのかもしれない。アメリカっぽい。

あるいはここではない建物に研究員がごっそりいて働いているのかもしれない。人間、半径10メートルくらいしか見渡せないわけで、あまり無責任なことは書けない。

けれどさっきから人の気配がないんだよな。





無駄にきれいな会議室には絵が飾ってある。

この絵はこれから何年かけて、何人の目に留まるのだろう。








あと1時間すると、四国あちこち+岡山から、膵臓や胆道の画像診断に興味があるひとたちがここに集まってくる、という。

なんだかまだ実感がわかない。窓の外は明るく曇っている。時間が経過するふんいきがない。









スタバってこんなロゴだったっけ。

いつも一人でいたいと言っているわりに、見知らぬ場所でちょっと一人になると、途端に、「さっきまで自分が暮らしていた世界の法則と、今いる場所の法則が、ちょっとずれはじめているのではないか」という妙な恐怖がわいてくることがある。

ぼくはいろんなことに向いていない。物思いにふけることに。ひとりでコーヒーを飲むことに。休日に出張先で出番を待ちながらブログを更新することに。

大丈夫か? そこのドアを開けて、外に出たら、実はぼく以外のすべての有機物が消滅してはいないか?