2016年9月29日木曜日

まどか☆マギカも見ていない

「ヒット曲をインストアレンジした音楽」ってのがある。マックスバリュウとかでよくかかっている。たとえば木村カエラのButterflyとか、SMAPの夜空ノムコウとか、今井美樹のprideとか、もう元の曲よりも「マックスバリウのインスト」の方がよっぽど多く聴いているんじゃないかと思うときがある。スピッツのチェリーもそうだ。

あれはなぜ、元の曲をそのまま流さないのか。いろいろ理由はあるんだろう。商売のやり方みたいなものを丹念にググっていけばわかるんだろう。原曲を流すよりもインスト版の方が著作権料的に安価で済むとか、歌詞がある曲だと客の気が散るとか、店の雰囲気を統一するのに便利だとか、ほかにもぼくが思いつかない理由がいくつか出てくるんだろうけど、あいにく店内にかける音楽を決めるフロアマネージャーではないぼくは、「原曲よりもアレンジの方ばかり聴いて、インストの方が当たり前になってしまった悲しさ」の話をしている。Butterflyを家で聴いた回数よりも結婚式で聴いた回数の方が3倍ほど多く、マツクスバルーで聴いた回数の方が30倍多い。ちなみに、嵐のあとにかかることが多い。


話を変える。今はもうだいぶすたれてしまった文化だが、アニメがヒットするとキャラクタが「AA(アスキーアート)」にされ、2ちゃんねるの「やる夫系スレ」にて二次創作のアクターとして再度消費される、という流れがあった。何を言っているかわからない人は、そのままの路線で生きていた方がいいから説明は省く。

たとえばぼくは「SchoolDays」というアニメをまったく見ていないのだが、伊藤誠のことは顔も性格も視聴者からの評判もほぼ知っている。なぜかというと、伊藤誠は2ちゃんねるの二次創作系スレで、「女ったらしで姑息、最後はひどい目にあって読者の留飲を下げるキャラ」としてスターシステムの核に君臨し、ありとあらゆる二次創作で脇役を演じた「スレ俳優」だったからだ。元ネタを知らないのに、伊藤誠というキャラクタがどういう性格でどんなセリフ回しをするかを知っている。知った気になっている。中途半端にわかってしまっている。

ぼくにとって、「元ネタは知らないけど、流行しすぎたおかげで把握してしまっているもの」は無数に存在する。

GLAYが一番流行っていた頃、HOWEVERを含めほとんど聴かなかったが、その後大学時代にカラオケで他人が歌うのを聴きまくったせいで中途半端に覚えてしまった。沢田研二のTOKIO(グループ名ではなく、曲名です)、ぼくは原曲を聴いたことがないけれど、一緒に仕事をする先輩達がカラオケであまりによく歌うので覚えてしまった。みかんのうたがSEX MACHINGUNSの曲だと知るまでに数年かかった。

「ひぐらしのなく頃に」も、「コードギアス」も、「Fate」も、どれも一度も見たことがないが、竜宮レナもルルーシュもセイバーも声まで想像できる(聞いたことないのに)。水銀燈のロマサガ2スレは本当に面白かったが、ローゼンメイデンを見たことがないしロマサガ2は未プレイであったし、もはや何がオマージュで何がパロディなのか全くわからないまま、ストーリーのおもしろさだけをただ追いかけていた。


話を変える。


玉村豊男さんという卓越した文筆家……小さなワイナリーやってる人……ええと……世界の料理を日本で再現する人……うーむとにかくすごい人がいる。彼のエッセイはとてもよい。昔、ある編集者から、玉村さんの「料理の四面体」という名著を紹介され、没頭する勢いで読みふけり、感動の末に「病理の四面体」というオマージュ記事を書いた。元ネタからはだいぶ劣化してしまっており、彼我の実力差が胸に突き刺さった。もやもやした。

記事はFacebookに載せたのだが、だいぶ経ってから、編集者が「料理の四面体」を送ってくれたのは、病理の四面体を書いて「うちで本にせよ」というメッセージだったかもしれないと思った。ああ、特にことわりもなくFacebookに載せちゃった、悪いことをした、などと自分勝手な反省をしたあげく、でも記事の出来はあまりよくなかったわけで、まあ、許してよね、と自分の中で手打ちにしてしまった。


そういえばぼくは、編集者がマンガ「もやしもん」に出てくるキャラに似ていると言って「西野マドカ」というあだ名をつけ、ツイッタランドでさんざんにいじり倒したのだが、彼女は「ぜんぜん似てません」とふくれ面であった。