2017年5月9日火曜日

病理の話(76) トロントロンビンビン

病理学会に来ている。

人体には「何かをするための、あるひとつのルート」というのはどうも存在しないようだ。

ぼくらはつい、

「ヤマトのお兄さんは、荷物を運ぶために生きている」

とか、

「ローソンのお姉さんは、パンやコーヒーを売るために生きている」

という見方を、体の中に適用してしまう。


でも、ヤマトのお兄さんが動くとき、そこには「配送トラック」があって、配送トラックにはガソリンを入れる場所が必要で、あるいは、ヤマトのお兄さんがいっぱい動くならばそのとき佐川やゆうパックのおっさんたちもまた仕事が増えたりして、ときには、ヤマトのトラックがここを通るときに後ろをついていけばマンションのドアを開けるお姉さんがいるだろう、みたいな、下種なストーカーが潜んでいたり、そのストーカーに気を配る警察がいたり、とにかく、

「何かひとつが動いたときの影響は、一本道ではない、あっちもこっちも、様々に連動して動く」

というのが、体の中の大原則なんだと思うのだ。



HGFとかHGFAとかHAIとかそのへんを35年にわたって調べ続けた宮崎大学の先生の宿題報告を聞いていた時、HGFがトロンビンによっても刺激されるという話を聞いて、

「そうか、組織傷害が起こるとき、そこには欠損とか出血とかが生じているだろうから、トロンビンもまた役割をもつわけだけど、トロンビンは単に凝固系に関与するだけじゃなくて、HGF系の組織再生にもついでに関与してるのかもしれないなあ……」

なんていうことを、つらつらと考えていたのだ。



難しくて、半分くらい夢の中だったから、トロンビンを2倍にして遊んだりしていたんだけど……。