2020年11月30日月曜日

病理の話(479) 不安や不満が腹にたまるのはなぜか

前回の記事を書いていて思ったことをシンプルに書きますが。


われわれ、イライラしているときとか、不安なときとかに、「腹になにかが溜まるような」感覚を覚えることがある。これはなんだろう?


何が溜まっているのだろう? 重苦しいというか……「うえっぷ」となる感覚……。




今ぼくがわかっている限りでこの質問に答える。



自分にとって敵にあたるものを感じてイライラするとき、これから何が起こるのだろうかとおびえて体をちぢこまらせ、不安におびえるとき。


体の中では、交感神経がガッと興奮している。


交感神経は、「Fight and flight」にかかわる神経だ。日本語に訳すると、「バトルか、逃げるか」である。かつて森の中で暮らしていた人類が、肉食動物にばったり出会ってしまったとき、そこで踏みとどまって戦うか、あるいは脱兎の如く逃げ出すか。いずれにしても、人体はある程度共通の仕組みを発動する。


心臓をばくばくと動かして、全身の筋肉に、栄養を送り込んで、いつでも動けるように準備する。戦うにしろ、逃げるにしろ。


汗をかけ!


筋肉や脳以外に余計な栄養を送っている暇はない! メシ食ってる場合か! おしっこしてる場合か!


だから胃腸の動きをとめる。ご飯を消化するはたらきも最低限にする。胃腸がうごめくことはけっこうカロリーを使うのだ。戦うか、逃げるか、そんなときに腸を動かすことはリスクでしかない。ましてウンコしたくなったら困るだろう。膀胱だって勝手に収縮してもらってはだめだ。




すなわち「戦うか、逃げるか」というシチュエーションにであうと、あらゆる臓器、さらにはホルモンが総出で、「走ったり叩いたりする動きを最適化するために」人体が調整されるのである。




イライラする、あるいは不安でドキドキするとき、胃腸は動きをとめてじっとしており、動きの悪くなった胃腸は重く張ったように感じられる。


昔の人が「自分の胸に聞いてみろ!」と言ったのは、無意識に心臓がドキドキすることを自覚して「心は胸にある」と感じたからだろう。「溜飲が下がったわ~」とか、「腹オチしたわ~」というのは、リラックスをとりもどして胃腸がうごきはじめ、ウップと詰まっていた胃腸のはたらきが元のように戻ったことを意味するのではないかと思う。


ほかにもホルモンの話とかいろいろしなきゃいけないんだけど、今日はざっくりでいいや。