2016年12月6日火曜日

病理の話(25)

「病理診断報告書の書き方」について、ぼくのやり方を述べる。特に、「診断がやや難しかった時」の書き方を記す。

まず。

臨床医が一番最初に目にする一行目に、結論を書く。

「本病変は、○○癌です。○○に転移があります。やや特殊な組織像であり診断に難渋する部分がありましたが、後述する根拠によって○○癌と診断します。」

次に、二行目から、いわゆる規約事項と呼ばれる、臓器毎に決まった「書かなくてはならない、書くことが推奨される事項」を箇条書きにする。

「以下に規約事項を記載します。
・サイズ
・形状
・WHO、UICC、日本の取扱い規約などが定める分類方法など
・病変が採り切れているかどうか
・ステージング、と呼ばれる総合評価」

そして、規約事項の箇条書きの「あとに」、詳細な組織解説文を書く。

「本病変の詳細な病理像です。肉眼的に……。組織学的に……。典型と異なり……。免疫組織化学染色による検討では……。従って、○○、□□を根拠とし、△△を参考所見と捉え、前述の如く診断しました。」



とにかく結論が知りたい人は、一行目を読んで満足する。

とにかく規約事項(おきまりの分類・記載項目)が知りたければ、二行目から十二行目くらいまでを読んで満足する。

ほんとうに病理にまで興味があれば、あるいは、この病気がまれだとか特殊であるという理由を知りたければ、最後まで読み、満足する。



以上の、どの段階で満足するかは、レポートを読む人の職種やポリシーによって様々である。だから、段階的に書く。いつでも同じ場所(理想的には、同じレイアウト)に、だいたい同じ「レベル」の内容を書くようにする。

なお、「病理医だけが知っていればいい、専門的でマニアックな知識」についても、最後の方になるべく記載するようにする。ぼくらが思う以上に、最近の臨床家たちは、病理のやり方を知ろうとしている。ブラックボックスを開けようとしている。だから、病理医の方で勝手に「知らなくていいよ」と判断しないことも大切だと思う。

なお、病理のマニアックな知識をきちんと書いておくと、数年経ってからふと思い出して、「あのマニアックな所見、意味があるな、よし、調べよう」となったときにも、検索システムで容易に探し出すことができる。

専門的でわかる人にしかわからないことを書くと、

「規約事項は、規約の改訂により古くなる。しかし、病理医のマニアックな目線がもたらしたオタクな所見は、何十年経っても形態学的に同じ意味を持ち続ける」




***


今回の記事も、下に進むに従って「病理医として実際に働いた人しかわからない内容」が書かれている。

こういう記事を「読みづらい」と考える人も、確かにいるようなので、まだまだ研鑽が必要だなあとは思うが、今のところ、ぼくはこの「グラデーション・メソッド」で診断書を書くようにしている。