世代ごと、人ごとに、自分の何かを彩ってきた音楽というのがあるだろうな、とは思う。
何か、アタマがごしゃごしゃとなっていた時期に聞いていた音楽は、記憶に残る。
とてもいい思い出や、いやな思い出といっしょに、ある曲が忘れられなくなる。
記憶と歌詞がセットになっている。
リズムで風景が呼び起こされる。
音楽と記憶がリンクしている、っていうとかっこいいけど、いじわるに言うならば、曲が鳴ると黒歴史! 黒歴史! と吠え出す、パブロフの犬、みたいなものだ。
話は変わる。
かれこれもう15年くらい、ぼくと同姓同名の人間がブログをやっている。すごいポエムを載せている。研究会などで出会ったあまり面識のない人に、
「先生すごいよね、ツイッターのほかに、ブログもやってて」
とか言われることがある。前はブログはやってなかったので、「人違いです」と言えたのだが、今はこのブログをやっているので、ややこしくなった。念のため、尋ねる。
「それはあれですか? 脳がトラベルほうですか?」
たいてい、こうだ。
「いや、なんか死がどうとか書いてるほう。」
それはぼくではない方の市原君です。お間違えのないように。
正直、迷惑であった。ポエムを書いてないのに、ポエマーだと思われるのはつらいな……。
でも、まあ、最近思うことがある。人間、誰しも、自分ポエムを詠むよなあ、ということ。人は誰もが、音楽がからむと、すぐポエむ。
(ポエ-む:【動詞】詩を読んでドヤる。例「あいつまたーーってやがる」)
私ポエマーじゃないよとか、俺そんな痛い人間じゃねぇよとか、そういう「アンチポエム型」の人間に限って、べろべろに酔っ払った深夜2時過ぎにテレビから聞こえてくる昔のランキングに、「おわー懐かし!」みたいに大声で反応して、涙目になっていたりする。
そりゃ、ある種の、ポエムじゃねぇか。
言語を使わないでポエマーやってるだけじゃねぇか。
音楽が記憶を呼び覚ます、みたいな奴だろ? ポエムじゃん! 自分、ポエマーじゃん!
ずるいよなーと思う。ポエムのこと、バカにしといてさ。音楽がかかったら、感傷的になってさ、歌詞とか口ずさんでんじゃん。歌詞って詩じゃん。
ぼく「……果てしない闇の向こうに?」
元バスケ部の営業「ウォーウォー手を伸ばそう!」
ぼく「……どぶねずみみたいに?」
コテハン歴22年コアゲーマー「美しくなりたい!」
ぼく「……走る走る?」
ナンパの達人スタイリスト「俺たち!」
ぼく「ポエマーじゃねぇか」
3人「いいえちがいます。」
築地の国立がんセンターで、病理医になるための任意研修をしていたころ、毎日がぎちぎちに充実していて、ありがたいやら、つらいやら、もうズタボロだったときに、ある曲を聴いていた。
「モータウン」という曲で、ナンバーガールというバンドの曲である。ぼくは、この曲がかかると、つい、普段はバカにしている「ポエマー」になってしまう。せっかくなので、皆さんにも、「モータウン」の歌詞をご紹介しようかなあと思う。JASRACに怒られない程度に。
※「モータウン」はインストゥルメンタルです。