2018年4月24日火曜日

覇王丸「アッタマにきたぜぇ」

腹筋が弱ってきたので、油断をすると、腹がぽこんと出る。

頚椎症なので、油断をすると、手がしびれる。

だからいつも油断をしないようにふるまっている。

あたかも隙がないようにふるまっている。

背筋をのばして、武術の達人のような姿勢でPCに向かう。

仕事をする。諸事、侍の気分だ。

律すればうまくいく。

律しよう。

なんだかそうやってがちがちにしていないと、腹は出てくるし、手はしびれてくるしで、仕事中に気が散ってしょうがない。




休みにソファでのんびりうつぶせに寝転んで本を読んでいたのだが、だんだん首がきつくなってきたとき、「あっ」と思った。

昔は長時間寝転んで本を読むことになんの不自由もなかったけれど、今のぼくは、「長時間ゆっくりすること」が体力的に厳しくなっている。

姿勢をかえた。あおむけになる。本を持ち上げる。

どうにも腰や首が落ち着かないが、これでしばらくがまんをする。

うーん、のんびりするのって体力がいるんだな。

根負けする。ソファにきちんと座り直す。足も組まずにまっすぐ背中を伸ばす。

本を前にかかげて読み続けた。まるで儒学の徒のような気分だ。




祖父が好きだった時代劇を、祖父が亡くなったあと、ぼうっと見ていた。昔は今と違って夕方などにときどき時代劇というドラマをやっていたのだ。

時代劇に描かれる武士や僧侶などは、夜、うすぐらい灯りのもとで、きれいに正座して本を読んでいた。ぼくはそれを寝転びながら見て、

「昔の人って本読むときにあんなに真剣にならなきゃいけなかったんだな、たいへんだな、今みたいに寝転んでマンガ読めるのは幸せだな」

などと思っていた。

けれども、今になって思う。




中年は寝転んでマンガを読むのがつらい。

一事が万事、「サムライ化」しないと、いろいろと不具合が出る。

ぼくはあの時代劇はきちんと中年を描いていたのではないか、などと今になって思うのだ。