2021年5月12日水曜日

病理の話(533) ときおりやってくる分類マニア

病気の原因をいくつかに分ける、というのを久々にやってみる。

ありとあらゆる病気をざっくり分類するのだ。さあいこう。


A) 人体外からやってきたものによって、体が攻撃されて痛めつけられる

B) 人体外からやってきたものを叩くための警察システムが過剰防衛して、体が痛めつけられる

C) 人体を維持しているシステムが(経年)劣化する

D) 人体をプログラムしている遺伝子がおかしくなることで、細胞の制御がくるう


だいたいこんなものかな。それぞれの病気の例をあげよう。箇条書きのほうが、かえってわかりやすいと思うので、今日は箇条書きにしてみるぞ。


A) 人体外からやってきたものによって、体が攻撃されて痛めつけられる

 ケガ。
 塩酸をかぶる。
 やけど。
 タバコによる肺気腫。
 食あたり。
 新型コロナウイルス感染症。


B) 人体外からやってきたものを叩くための警察システムが過剰防衛して、体が痛めつけられる

 花粉症。
 ぜんそく。
 IgA腎症。
 新型コロナウイルス感染症(ここにも入る。ウイルスだけが問題なのではなく、そのウイルスを排除しようとする人体内の奮闘も、人体を痛めつける原因となってしまうのだ。戦争が本土決戦になると、敵のミサイルも味方のミサイルも国土を破壊してしまう)


C) 人体を維持しているシステムが(経年)劣化する

 腰痛。
 動脈硬化。
 白内障。
 アルツハイマー型認知症。

D) 人体を維持しているシステムのバランスがくるっている

 更年期障害。
 子宮内膜症。
 勃起不全(ED)。
 胃酸過多。

E) 人体をプログラムしている遺伝子がおかしくなることで、細胞の制御がくるう

 がん。
 I型糖尿病。



 だいたいこれで網羅できるかな。ほか、流れがあるはずの場所で流れが悪くなって詰まってしまう系の病気に胆石症や尿管結石などが存在するが、これらはC)の(経年)劣化に入れてしまう。子宮内膜症みたいに「本来いるべきはずの場所に細胞がいないことで起こる病気」は分類が難しいが、D)システムバランスの異常と捉えるといいかもしれない。

 分類したからいいことがあるかというと、その病気にまさに苦しんでいる患者にとってはあまりうれしいことはないのだが、多くの患者・多くの病気を日替わりでみていく医療者にとってはけっこう役に立つ。読んでいておもしろいブログ記事ではないよね。ごめんね。でもたまにやりたいの。