2020年9月10日木曜日

ルフィもワタルも強かった

若さというのはヤジロベエの芯が太いこと、ヤジロベエの腕の先についたおもりがしっかりしていること。あるいはヤジロベエといってもまるで傘の骨組みのように、無数の腕が出ていてどこからどう揺らされても安定して元に戻れることをいう。


この表現は、かつて自著で「ホメオスタシス」の説明のために使ったことがあるかもしれない。


中年のど真ん中を暮らすぼくは今、ヤジロベエに例えると腕が2本になった状態だ。ここからがおそらく長いのだと思う。2本の腕でバランスを取っているから、左からコツンと押されてもまた真ん中に戻るし、右からガンと叩かれてもまた真ん中に戻る。しかし一度押されたらしばらくの間はゆらゆらと揺れてバランスをとっていなければいけない。


そして前から押されるとけっこう弱い。


四方を環境に取り囲まれてコツンコツンと何かにぶつかり続けながら生活をする。四六時中ふらふらと揺れていることで真ん中を保つ。そういう状態なのでときおりぐっと調子が悪くなる。それは猛烈な眠さとして表現されたり、朝方に腸がぐるぐると大騒ぎをすることで表現されたり、不意に関節が痛くなったり、全身の筋肉が笑い出したりといった、いわゆる「ばくぜんと調子がわるい」状態につながる。


これと折り合いをつけるために、脳をほっぽらかしにした体が何を考えるかというと、これはもうとにかくじっと真ん中に戻って休む、あるいは、振り子のリズムを思い出しながらゆらゆら、ゆらゆらと揺れて息を整える。


その一方で脳は、「もうちょっとクルンクルンしても大丈夫、戻れるよ」だとか、「今度右から何か来たら前に避けよう、まあ前に避けたら棒から落ちるけど、そこは落ちないギリギリのラインで」などと、けっこう無茶なことを言ってキヒキヒと笑っている。




みんな知っているか。


ヤジロベエは頭がでかいとおっこちやすい。でもヤジロベエに頭がないと、ぼくらはそれを見てもなんだか感情移入ができないのだ。