2018年8月16日木曜日

エントロピー逆流的執筆

猛然と原稿を書いて迷惑をかけている。全12章、書きおろし。

4月くらいから書き始めた原稿だ。

実は、3週間くらいで書き終わるつもりでいた。ぼくが普段から書いている文章のスピード的には3週間もあれば十分書けるはずだった。

けれども、ぜんぜん書き進められなかった。

予定の3か月を終えて、3章目の途中までしか書きあがらなかった。とにかくぼくの筆がまったくのらなかった。



迷っていた。

この本を世に出す意義が文章に乗らなかった。

書いても書いても進まない。

前に進んでもすぐ全部消してしまっていた。




夏季休暇を終えて、8月第1週。

当初の締め切りは7月いっぱいだった。

締め切りをすぎた。はじめての経験だ。




さすがに反省をした。第3章の文章と向きあい、「なぜこの本を出したいのか」「この本で世の中に何を伝えたいのか」をいったんなしにした。

「ぼくはここに何が書けるのか」だけを追いかけて文章を書き始めた。




するとすごい勢いで「4章」が書けた。1~3章を少し手直ししてまとめて編集者に送った。

そのままアイディアが出てきて止まらなくなった。

5章、6章、7章、8章、9章。

ここまでを2日で書いた。仕事の合間に。寝る間を惜しまずに。

1つの章がだいたい8000字から10000字である。





「なぜこの本を出したいのか」「この本で世の中に何を伝えたいのか」は茫漠として見えなくなった。

ただ、「ぼくは何が書けるのか」だけを考えたところ、書ける内容を次々と投入した文章があっというまに多層化して本を作り上げてしまった。



今、10章を書き始めた。30分ほどで半分書きあがったところだ。

さすがに少し息を入れて読み直す。




とはいってももう締め切りは過ぎているのだ。

すでに編集部には大きな迷惑をかけている。

書きおろしの単行本だから許されるとかいう問題ではない。

反省しながら原稿に戻る。




明日には12章まで出来上がることだろう。

この本をぼくは自信もって世の中に投入することができるのだろうか。

少なくとも等身大ではある。やれることのかたまりではあるのだ。




けれどもそれではプロの仕事にはならないのではないかなあ。

やれることを飛び越えなければ、人様からお金をとることはできないのではないかなあ。





ぼくがぼくに問いかける。ぼくは苦笑いして、すぐまじめな顔に戻り、謝る。





すみませんがそういう本です。来年の春には出ます。通称「ヤムリエ」といいます。まだいろいろ秘密です。