できあがって書店に並んだ本を、あらためて自分で読もうとトライしているのだが、目が滑ってしまってなかなか読めないでいる。
校正のときに丹念に読み過ぎた。
あまりに何度も読んだから、覚えてしまった。
読んでいても、ちっとも「おっ!」とか「おお!」がない。新鮮な感動がゼロだ!
だから、つまんない。自分の本はつまんない。
「……なんてこというんだ! おもしろいぞ!」
いや、そういうわけではなくて。
せっかく「紙の本」として形になって世に出たものを眺めても、中身はすべて知ってしまっているし、なんだか気恥ずかしいというか、なんというか、長年連れ添った夫婦がいちいち愛を語らない、みたいな、微妙な距離感になってしまう、ということを言いたかった。
ほめるところと言ったらイラストレーターさんとかデザイナーさんとか編集者とか、そういうところしかない。
もう自分の文章についてはノーコメントになってしまう。
先日コーチャンフォーという巨大書店の中で開催された「藤村・嬉野・かわいい子」のトークショーを見に行った。
藤村さん、嬉野さんというひとたちは、北海道のローカルバラエティ「水曜どうでしょう」のディレクターである。
彼らは最近本を出した。「仕事論」という。おもしろかった。
けれども本題は本の話ではなかった。何かというと、「ドラマ・チャンネルはそのまま!」の宣伝なのであった。ディレクター陣は最近、このドラマの製作にかかりきりだった。イベント開催日は、ちょうど地上波放送の前日である。
かわいい子、というのは元SKEで現在オフィスキューに所属している東李苑(あずま・りおん)さんという、まあほんとに顔のちっちゃいかわいらしい方で、この方はタレントでもありドラマにも出ている。
このかわいい子とむさいおっさん二人がとても楽しそうにトークをするイベント。
話題は終始、ドラマのことに尽きる。
本の話はいっこうに出てこない。
イベントが終わったら、本を持って二人の前に並べばサインをしてくれるという、サイン会もあるのに。
本の話にならない。
ぼくはそれをみながら、「あーわかるなーわかるなー」という気持ちでいっぱいだった。
やっぱ書き終えた本の話って、しづらいよな。
実際にはそんなことないのかもしれない。
トークショーの話題がドラマの内容ばかりだったのも、あるいは、会場にドラマ撮影に関わったスタッフが多くいて、その日のムードがドラマ一色だったから、に過ぎないのかもしれない。
けれどもぼくはずっと考えていた。
「自分の書いた本の話」というのは難しい。
「他人の書いた本の話」のほうが100倍簡単で、楽しくて、ためになり、気恥ずかしくないのだ。