雨音が強い。めんどうだなあと思う。車に乗るまでの短い時間でスーツをぬらすのがいやだな。
スーツがぬれたからといってどうということはないのだ。
体の中にばい菌が入ってくるわけではない。
スーツがひどく臭くなるわけでもない。ただの水だから。
それでも、一瞬の雨に打たれるのはストレスである。実務的には何のダメージもないにもかかわらず、だ。
「うまくやると避けられるかもしれないけれど、横着していると避けきれない、小さないやがらせ」のことをずっと考えている。
かさ差せよ。まったくその通りだ。
やむまで待てば? 何も間違ってない。
でも晴れていればこんなぐちぐちとした心配り自体をしなくてよかったんだ。ああ、雨はめんどうだ。
と、雨で思考訓練をしておくのである。
そうすれば日常の「いやなこと」も、あの日の雨といっしょかな、という感じで乗り切れる気がする。
めんどうくさがらずにさっとかさを差そう。
あるいは晴れるまで待とうではないか。家の中でもやることはいっぱいある。ぼくはまだ水曜どうでしょうの新作DVDを通しで見ていなかったじゃないか。ハヤカワTwitterが進めていたSF「ネクサス」をKindleで買ってからまだ1ページも読んでいないじゃないか。
ハヤカワTwitterはぼくをフォローしてくれない。人から聞いた噂によると、前担当のひとりが「あの病理医はなんかむかつくから、フォロー返さないでやれ」と、申し送りしたのだという。
えっ、マジで? 傷つくなあ。その噂、ほんとなの? とたずねた相手はニコニコしていた。
だまされたかもしれない。小雨がスーツをぬらす。