2021年9月24日金曜日

病理の話(579) 病理を知りたいタマゴのための本

先日ある編集者から、「学生や研修医向けの、わかりやすい病理学の本ってどうでしょうね」と言われたのだけれど、もうあるじゃん……と思った。


たとえば、病理学の講義で挫折した学生さんとか、そもそもあまり講義をまじめに聞いていない学生さんにはこれがいいと思う。『こわいもの知らずの病理学講義』。


https://www.shobunsha.co.jp/?p=4390


えっ、一般書じゃん……さすがに勉強するのに一般書はどうなの……と思われるかもしれない。実際にこれは非医療者にすごくよく売れているベストセラーである。しかし、読む人が読めば、この本はRobbins Pathologic Basis of Diseaseシリーズの副読本だということがわかる。病理学の大著と同じ構成、同じ論調で、ただ語り口が微妙に大阪弁なだけ。だから背伸びせずにまずここから読むのがいい。まじめに勉強した医学生や研修医なら「全部知ってる~」となる……はずなのだが……たぶん9割9分の医学生は「えっそうだっけ?」となる場所が数カ所くらいあるだろう。病理学というのはそういうものである。


この次に読む「教科書」となると田村先生の『図解入門よくわかる病理学の仕組み』だろう。医者以外のメディカルスタッフ向けだが、さきほどと同じように、どうせ医学生も研修医もこの半分も理解していないので読む価値はある。

https://www.amazon.co.jp/dp/4798028355/ref=cm_sw_r_tw_dp_X148FF01HZ9R78RVK8F6


で、この先だ。学生や研修医が習う、基礎中の基礎、いわゆる「病理学総論」ではなくて、もっと病理医っぽい……病理組織学。病院という診療現場で使う、実践的な病理を学びたい人はどうするか。



すると『スパルタ病理塾』(医学書院)と、『臨床に役立つ! 病理診断のキホン教えます』(羊土社)が浮上する。『臨床に活かす病理診断学 第3版: 消化管・肝胆膵編』(医学書院)を読むのもいい、最後のは前ふたつと違って「消化器寄り」なのだけれど、臨床と病理との「橋渡し」がすばらしい本なので、臨床医にとっては読んでいて理解しやすいだろう。



で、もう少し、理念とか学問に食い込みたい人、あるいはもう将来病理医になるぞと決めている医学生など、鼻息の荒いタイプにおすすめしたい本として真鍋先生の本を紹介する。このブログでも何度か書いてきたけれど、今一番熱いのは『皮膚病理のすべて I 基礎知識とパターン分類』である。これはすごい。皮膚病理に興味がなくても、病理医になるのであれば一読……というか通読する価値がある。拾い読みでもいいが後半を忘れないでほしい(すばらしいので)。臨床医はここまで学ぶ必要がないかもしれないが、病理医はここを通り過ぎておくとたぶん「すごく強固な診断力をもった病理医」になれること請け合いである。


https://www.bunkodo.co.jp/book/4LPK3AL6RK.html


この本の弱点をただひとつ上げるとしたらそれは「高い」ってことくらいか。病理の勉強のために初学者が13000円出すのはつらかろう。でもこういう本はたいてい大学に置いてあるので、借りて読めばいいのだ。


ここまでの本を通しで読む途中、どこかのタイミングで、『Quick Reference Handbook for Surgical Pathologists』(南江堂が輸入してます)を読むといいだろう。これ、2019年に第2版が出てたね。持ってないや。買います。買いました。


https://www.amazon.co.jp/dp/3319975072/ref=cm_sw_r_tw_dp_B8CR10K9NJYTF8YCR4DD?_encoding=UTF8&psc=1


英語の本だけど病理医にとって読めない部分はほとんどないと思う。なぜならイラストばかりだからだ。イラストごとに単語的にちょろちょろ英語がついてるのを覚えるのにも便利。使える。


こんなとこかな。自著? めちゃくちゃおすすめできるけどブログ読んでくださっている人はもう持ってるだろうから別に書かなくていいと思います。