2021年9月1日水曜日

かかりつけない

髪が伸びてきたのだが次の週末に切るにはまだ早い気がする。


そう思ってその次の週末の予定をみたら隙間がなかった。なるほど、その次もだ。だから今週末に切るしかない。


スマホで美容室を検索してネット予約をしようと思ったが、次の土日はすべて予約が埋まっていた。場末の美容室のくせに人気店だなんて生意気である。


駐車場があって、店が広いわりに席数が少なく、美容師さんが余計なことをしゃべらない、ぼくのくせのある髪質をいやがらずになんか適当に切ってくれる、苦節20年の末にようやくたどり着いた店。


あーちきしょう切りたいときにサクッと切ってくれりゃなー、と、ないものねだりをする。しかしまあ閑古鳥系の店はいつ潰れるかが心配だし、かえってこれでよいのかもしれない、と経営にまで無駄に気を回す。


今の美容師さんは男性だ。その前に別の店で切ってもらっていた美容師さんは女性だった。職場から比較的近くて、夕方、仕事が一段落したタイミングで車に乗って髪を切りに行き、終わったらまた職場に戻ってくる、みたいなことをやっていたころである。その美容師さんは、もう名前を忘れてしまったが一時期とても人気のあったモデルさんに似ていて、かつ話もあっけらかんとしておもしろいので当然のように人気があった。腕が良かったのかどうかは知らない。店長に近い立場だったのだけれど、ある日、妊娠をきっかけに突然お店を休んでしまった。電話で予約をとろうと思ったら若いバイトが、「あっ、店長おめでたなんですよ!」とだけ言ったので、「お、おめでとうございます! では!」と言って電話を切ってしまった。それっきり行っていないが、あそこもまあ、いい店だったと思う。


「かかりつけの美容師」をころころ変えてきた過去を思い出すと、美容室を変えることにたいして大きい理由はなかったような気もする。理想通りに切ってくれた、切ってくれなかった、みたいな「腕に対する評価」よりも、「なんか電話で予約がとりづらかった日が一回あった」くらいで、なんとなーく次の美容室を探してしまっていた。今はもう、ひとつの美容室に延々通うことがいちばん「脳のエネルギーを食わない」ので、たぶん新たに次の美容室を探そうという気持ちはそうそう起こらないと思うのだが、昔はもう少し、身軽だった。身軽で野放図で軽薄に、「人を変えていた」。



書いていて思ったが病院とか医療なんかもそうなんだろうな、と思うことはある。自分のことをいうと、ぼくは、今までに20箇所以上の歯医者に行っていると思う。どこもほとんどいっしょなのに、なぜときどき変えてしまうのか。医療の世界で20年近く暮らしているけれど、「かかりつけの歯医者が決まらない問題」は、美容室とは違っていまだに解決していない。