2021年11月25日木曜日

病理の話(600) きりのいい数字なので数字をかぞえてみる

病理の話が通算600回。ときどき同じ内容を書いているけれど、少なめに見積もっておそらく300くらいの話題は書いてきたことになる。


しかしそれはまああたりまえなのだ。なぜなら病理が扱う「病気」の数はもっと多いからだ。


病気のうち、仮に「がん」だけに絞ったとしてもけっこうな数がある。TNM分類という国際的な分類では、がんをまず29種類にわける。これは、どの臓器に発生したかでわけている。また、Wikipediaの英語版、list of cancer types(がんの種類のリスト)を見ると……


https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_cancer_types


なんと148種類の「がん」が項目立てされている(※自分で数えました)。しかしこれでもまだすべてではない。日常診療で分類している「がん」はこれよりさらに多いというのが、項目を見ていてもあきらかにわかってしまうのだ。


たとえば上記の148種類の中に、gastric cancer(胃癌)というのがある。しかしこの胃癌、WHO分類の「青本」と呼ばれる教科書をみると、さらに6種類に分類されるし、この6種類の中にもまた細かく区分けがあるのだ。


この作業は、まんま、動物や虫を分類していく作業に似ている。オニヤンマとシオカラトンボはどちらもトンボだが、住んでいる場所も好きな食べ物も違う、みたいな話と構造は一緒なのである。オニヤンマでひとつ、シオカラトンボでひとつ、ギンヤンマでひとつ絵本(「かがくのとも」など)が描けるように、がんも一つ一つに物語がありメカニズムがあるので話が尽きない。


そして当然のことだが病気というのはがんだけではない。だから「病理の話」はまず書き終わることがないのだ。ただし、病気や治療の話がいかに話題豊富だからと言って、それらをおもしろく興味深く書けるかどうかはまた別問題である。山本健人はえらいなあ。