2021年11月5日金曜日

第6の味覚

タイトルを最初に決めてから、そのお題に合うように書く、というやつをやる。



一般に、味覚は5種類の成分によって成り立つとされている。

・甘み
・しょっぱみ(塩味)
・苦み
・すっぱみ(酸味)
・うま味

意外だがここに「辛い」はない、なぜなら辛さは温痛覚(あたたかくて、いたい)に基づくものだからである。先日ノーベル賞のネタにもなっていた。


「うま味」が明治期に日本で「科学的に定義」された味だというのはけっこう有名だ(ただし欧米がそれを認めたのはもっとずっと後のことだけれど)。「味の素」のモトを考えた人の伝記は本にもなっている。和食に欠かせない「昆布だし」を解明したかったというのが動機だともされているが、それはどうだろう。研究者というのは動機がなくても何かを見つけ出してしまうものである。京極夏彦が「動機のない殺人もある」と書いたとき、ぼくはとても納得した。……話がそれた。



この先、さらに味が発見されることはあるのだろうか?

たとえば、舌にさらに微弱な受容体みたいなものが発見される日がくるかもしれない。細胞の表面にあるタンパクはまるで解明し切れていないから十分にあり得る話である。細胞を構成する成分は、目で見てアレとコレとソレが含まれているなあと仕分けることができないくらいには小さくて複雑なので、いまだに見つかっていない成分だってまだまだいっぱいあるだろう。

……と、ここでWikipedia情報が手に入ったのだけれど、実際、「カルシウム味」や「脂肪味」、「デンプン味」などが、第6の味覚の候補として上がっているのだそうだ。でもこれらは名称としては流行らなさそうである。実際、「グルタミン酸(の)味」では和食の地位は上がらなかったであろう。「うま味」という納得の名称が対応していたからこそ、「第5の味覚」になり得たのである。たとえば脂肪の味は、昔からの言い方だと何に相当するのかな。料理人だとなんと表現するのかな。ソムリエはすぐオイリーって言うけど、あれは味覚というよりも舌触りにあたるものな気もする。油脂そのものの味に対応しているのかどうか。


ついでにWikipediaを流し読みしてしまおう。味覚以外の五感、たとえば嗅覚とか視覚が脳内で「味」に統合されていく過程を、基本味とはべつに「風味」と呼んでいるようだ。風味というのはそういうニュアンスだったのか、たしかに、舌で風味を味わうとは言わない気がする。



第6の味覚というのはまだ発見されていないかもしれないし、将来定義されるものなのかもしれないが、どちらにしても、「我々が毎日のように感じ取っていながら、言語にできていない部分」にそういったものが潜んでいるのであろう。あるかないかで言えば「ある」、しかしそれを「分ける必要があるのか」と言われてまた悩む。

今日の話はいつの間にか「分類論」なのだけれど、分類する理由を「必要性」にだけ求めるのもじつは少し違うかなと思うことがある。基礎研究や殺人が必ずしも動機を必要としない、というか「必要性を必要としない」ことがあるというのを、ぼくはわりと真剣に悩み考える。分類も「ついしてしまうもの」の筆頭である、自然とそういう考えに至る、考えようと思ってなかったけれど考えついてしまう、気がついたらその中にぽつんと取り残されたような状態になっている。りん、と風鈴が鳴る。