飲んだことのないハイボールの缶を見つけて買って、ビール→レモンハイのあとに飲んでから寝たところ、翌朝けっこうな頭痛に悩まされた。「安酒は悪酔いする」という言葉が頭をよぎ……らない。頭はかすんでしまって、あまりモノが考えられないのである。
とりあえず水分をとってアルコールの分解を進めようと思い、そういえば過去の医学的な知見によればアルコールの分解時には水だけではなくタンパク質が重要だったな……と回らない頭でぎりぎり思い付いて、炊けたご飯をよそい、タマゴを割り入れて、海苔といっしょに食べる。食後5分もしないうちに胃がけいれんしてきて(直接見えているわけではないから予想)、これはもしや、胃腸もやられているのでは、と気づいて、そりゃそうだ、二日酔いなのだ、なぜそんなことに頭が回らなかったのかと(もちろん二日酔いだから全体的に回っていないのだけれど)、頭を抱えた。何の薬を飲めばこの頭痛とむかつきと消化管のけいれんを解消できるのかわからず、ひとまず出張カバン(何故?)をあさってみたところロキソニンが入っていたので飲んでみた。
30分くらいで脳の悲鳴がおさまる。体のあちこちに向けて発していた救難信号が弱まったせいだろうか、消化管もおとなしくなって、その後ためしにお茶を飲んでみたところ問題なくスッと飲むことができた。ひさびさの二日酔いは振り返ってみれば軽かった。ただし、頭痛に襲われている最中は思考レベルが、毎朝ぼくが車で通りすがる家の窓枠に全裸で立ってちんちんを外に向けてふりかざしてカーテンの向こうからお母さんに必死で回収される園児より低くなっていた。病魔ってほんとこういうことなんだよな……とため息をつく。
ちなみに二日酔いのときに体が脱水気味になっているのは本当なので、水分をちびちび頻繁にとるとよいのだけれど、「アルコールの分解にはタンパク質も必要」だからと言って二日酔いの真っ最中にタンパク質を摂取してもそれが分解されて吸収されて体内で活用されるまでにはかなりのタイムラグがあるので、あわてて卵かけご飯を食べてもタンパク質的な意味では役に立たない。医学的に考えれば当たり前だ。ただし弱っているときにはそういう簡単なことがわからなくなっている。ご飯を食べると二日酔いがよくなった気がする、ということは確かにあって、それはおそらく食物に含まれている水分を少しずつ吸収することができるからではないのかな、という気がする。点滴を入れるようなものだが点滴を入れるまでもないということ。うす味のお吸い物を飲むと二日酔いがおさまるってのもそういうこと。浸透圧的にちょうどよく、少し熱くしておけば一気にグビッといかなくてすむから胃もビックリしないのであろう。こういう話をたとえば二日酔いで苦しんでいるときに横からやいのやいの言われたら殺意しかわかないだろう。なお妻はこういうときは大変そうだねと気持ちにだけ寄り添ってくれるし余計なアドバイスなど一切しないのでありがたいことである。
「二日酔いで苦しんでいるときに横でやいのやいの」
これがたぶん医療面接、さらには医療情報発信で失敗するときのパターンなんだろうなということをしみじみと実感する。言うにもタイミングが要るし、あっているからといってまくし立ててもだめだ。「しみじみと」の部分でしじみを思い出す。お味噌汁が飲みたい。そう、これはすべて、今朝起こったことなのである。