2016年12月13日火曜日

ヤマムラをなぐらせろ

「スーパーマリオメーカー 3DS」というソフトを買った。あのマリオが飛んだり跳ねたりする「コース」を、自分で作ることができる。

WiiU版のやつをちょっとだけ見たことがあったんだけど、なかなか自分ちでテレビに向かってゲームする時間をとることはないな、と思い、結局は買わずに終わっていた。でも、3DS版なら気軽にできるかなと思った。

これが、当たりだった。まだはじめたばかりだけど、おもしろい。

マリオのコースなんて、素人が作ったって、奇をてらってスターがいっぱいあるだけの面とか、ファイアバーが多すぎて神タイミングじゃないと通り抜けられない面とか、なんかすごい飛び回ってるうちにへんなところに隠し扉がある面とか、その程度の発想力しかわかないだろうし、自分でうまく作れるわけがないと思っていたけど。

チュートリアルがあるのだ。むかつくハト(見ればわかります)が、なんかうまいこといろいろ教えてくれる。

この、チュートリアルが、長いけれど、とてもいい。

マリオの面を作って自分で遊ぶだけのゲームだと思ってはいたけれど、ハトのヤロウはしきりに、

「自分の作った面を見た人が、おもしろい、遊びたいと思ってくれるようなコースを作ろう。説明しないとわからないような自己満足なコースではだめです」

「ギミックは多ければいいというものではない。敵と障害物はただいっぱい置けばいいわけではない。バランスを考えよう。相性がある」

みたいなことをいうのだ。企画とか営業の達人みたいな空気をかもしている。ハトのくせに。

いちいち適切で、ぼくはコースを作るよりまず先に、このチュートリアルにはまってしまった。



はるか昔の「マリオペイント」を知ってる人は、そこかしこに潜むマリオペイントらしさに気づいてクスッとするだろう。

うまくマリオの面が作れると、たぶん人に見せたりやらせたりする楽しみも出てくるだろう。

バージョンが更新されると、ネットに自作の面を載せたり、逆にネットからおもしろそうな面をダウンロードすることもできるという。

ま、これらの「マリオメーカーのおもしろさ」については、ぶっちゃけ、買わなくてもわかっては、いた。



しかし、ぼくはチュートリアルにおもしろさを見つけたのだ。任天堂が今まで出してきた、あのマリオもこのマリオも、ぜんぶ、「ユーザーがどうやって楽しむかな、どこで苦しんで、どこで快感をおぼえるかな」というのを研究して、計算して、作ったり消したりを繰り返した末に生まれてきた、(当たり前だけど)作り手がいる、作品だったわけだ。でも、作り手のことにまで思いを馳せるような想像力は、あのころマリオばかりやっていたぼくには、なかった。「なんかすごい会社がなんかおもしろいものを作ったからやるぞ」というだけだった。

子供の頃もそうだが、なんなら、中年になった今も、「マリオは任天堂の傑作」とは知っていたけれど、「こっちの遊ぶ顔を想像しながら、いろいろと作戦を練ってコースを作り上げた達人がいたのだ」ということ、作り手の顔を想像することまでは、至っていなかったのだと思う。

けれど、マリオメーカーでチュートリアルを始めたら、そういった想像がいっきに大脳に流れ込んできた。ぼくは、マリオメーカーのチュートリアルの中に、30年もの間マリオの面を作り続けてきた人たちからの「こっちこいよ」という笑顔を感じてしまい、それはなんというか、大人になったぼくが、子供のときの恩を返すだけじゃなくて、まだ子供でいていいし、大人として遊ぶこともできるんだよ、と言われたようで、とてもうれしいのだった。


ミニファミコンはちょっとおいといて3DSばかりやっています。