デスクワークの宿命、というよりも、これはストレートネックの宿命というやつで、同じようにデスクワークに励んでいる諸氏がみな体幹部の痛みに苦しんでいるわけではないし、ま、「姿勢の問題」というやつなのだろうが、最近は職場で姿勢の問題だなどと口にしようものならパワハラの疑いをかけられてしまうので、骨が弱いんすよーとか適当な言葉でお茶を濁すことになる。
骨というか筋肉だけど……。
以前に書いたことがあるかもしれないが、かつて、午後になると腰痛がひどくて、しびれまで感じるようになり、これはもうぜったいあれだ、ヘルニアとかそういうやつだ、と思って、困り果てて知人の神経内科医に相談してみたことがある。
寝るときの姿勢などを丹念に教えてもらい、多少の緩和は得られたものの、腰回りがガチガチなままだったので、整体をやってるお店に行ってみた。
すると、彼はぼくの腰よりも太ももをマッサージしながら、こういうのだ。
「太ももの裏ががっちがちなんですよ。長い時間座ってらっしゃるのと、運動が足りないのと、原因はその辺なんでしょうけど。
太ももの筋肉ってのは、付け根が腰にあるんですよね。
で、太ももの筋肉が硬くなるということは、腰を下側にひっぱる力が強くなる、というか……
ゴムが硬くなれば、ゴムがゆわえつけてあるところをひっぱっちゃうんです。想像できますよね。
ですから、あなたの場合、腰痛を治そうと思えば、腰を揉むんじゃなくて、太ももの裏をケアするといいんです。
痛いところに原因があるわけじゃないんですよ」
そしてストレッチを教えてくれた。単なる前屈である。こんなの中学校でやったわ。ほんとか? ほんとにこれで治るのか?
治ったのである。度肝を抜かれた。
筋肉とか骨とか、整体的なもの。それまでぶっちゃけ、なめていた。奥が深い。
なにより、「痛みが出た場所だけをケアするのではなく、原因に遡る」という説明が、ぼくの気質にぴったりフィットであった。家訓にしてもいいくらいだと思ったのだ。