病気を分ける方法はいくつかある。
たとえば、原因でわけてみよう。
・細菌とかウイルスが原因(感染症)
・何かが体の中で詰まる(心筋梗塞、脳梗塞、尿管結石など)
・体の輸出入バランスがおかしくなる(糖尿病、脂質異常症など)
・外からやってきた何かが体の一部を壊す(ケガ、薬剤性の胃腸炎など)
・体内にいる警察的存在が善良な体細胞を攻撃してしまう(自己免疫性の疾患)
・細胞がもっているプログラムの異常(がんなど)
まだあるけど、こんな感じだ。原因が違えば対処法も異なる。
ほかにも、「病気の原因が生じてから、発症までにかかる速度」でわけることもできる。
・すぐ発症……ケガなど
・わりとすぐ発症……心筋梗塞、一部の感染症など
・そこそこゆっくり発症……多くの感染症など
・ゆっくり発症……脂質異常症など
・かなりゆっくり発症……がんなど
この分け方はかなり適当にやった。実際にはかなりバリエーションがある。発症までの速度が違うと、診断のやり方がかわってくる(原因がわかりやすいとき、わかりにくいときがそれぞれあるからだ)。
さらに、その病気がどの臓器で起こっているか、で分けることも可能だ。
・骨や筋肉……ケガなど
・胃……ピロリ菌による胃炎とか薬剤性胃炎とか胃がんとか
・心臓……心筋梗塞、不整脈、弁異常など
・血中……糖尿病とか脂質異常症など
「主座」と呼ばれる、病気が主に巣くっている臓器によって、担当する医師が変わることはよくある。
診断を行うとき、どのような分類を念頭において病気を探るかによって、病気の正体が掴みやすくも掴みづらくもなる。どの分類を用いて病気を決めたらよいかに100%の正解はない。しかし、多くの理論やさらには経験によって、ある程度のやり方が有効であろうと推奨されている。
その「推奨」の根本には、実は、「患者の訴えをよく聞く」というのが含まれている。
で、病理診断は、患者に直接話を聞くことのない病理医が担当するわけだが、何を使って診断するかというと、顕微鏡……はもちろんなのだが、「主治医の話をよく聞く」ことが思った以上に大切なのだ。
だって、顕微鏡をみることで達成できるのは、あくまで多くの分類の中のひとつにすぎない、「細胞の形態」に準拠した診断方法だけだから。
病気の分類は多様であり、その分類それぞれに応じた診断方法がある以上、病理医もまた、「話を聞く」という非常に有効な手段を使わない手はない、と考えているのである。