ホームセンターでドリルを買う人はドリルが欲しいんじゃなくて穴が欲しいんだよ、的な話をみると、穴が欲しいんじゃなくて穴をあけて作ったものが欲しいのでは、って思うし、もっと言えば穴をあけて作ったものによって何かが便利になったり何かが美しくなったりするのが欲しいのでは、って思うし、さらに言えば穴をあけて作ったものによって何かが便利になったり何かが美しくなったりして結果的に自分が少し幸せになりたいのでは、と思うので、つまり、ホームセンターでドリルを買う人はドリルじゃなくて幸せが欲しいということになるのだが、ドリルを持つこと自体が幸せな場合もあるので、ホームセンターでドリルを買う人は何がほしいの? という問いに対しては「ドリルが欲しい。」と答えるのが一番無難で安全だということになるだろう。
ぼくはホームセンターが欲しい。ホームセンターに住みたい。ホームセンターになりたい。ホームセンターとして訪れる人々の毎日を想像したり、屋外に出してある苗が少し元気がなかったらこっそり水をやるなどの「気の利いたホームセンター」になりたい。この場合、ぼくが本当にほしいのはホームセンターそのものであろうか。ホームセンターに売っているものであろうか。ホームセンターにやってくる人々の笑顔であろうか。なんとなく、だが、ホームセンターそのものなのではないか、と思うのである。
だからポータルサイトみたいなのを作って運営している人たちをみると尊敬するのである。ポータルサイト自体にあこがれることがあり、ポータルサイトで紹介しているものを欲しがることがあり、ポータルサイトで紹介したものを手に入れた人の笑顔をみてうれしくなることがある。それが人生であろう。ぼくはいずれポータルサイトを作りたいのかもしれない。以前にFacebookにもそのように書いたことがあるな、ということを、そういえばずっと覚えている。