2018年6月12日火曜日

普段ツンツンしてるけどいざというときにドラ息子になる萌えキャラ

仕事目的で乗る飛行機のお金は、出張後に支払われることが多い。

支払いはだいたい出張の2か月前には終わらせている。

つまり、お金がぼくの口座に入金されるまで、2か月ほど空く。

入金されるまでは、ぼくが「立て替えている」ことになる。

今月も、2か月前に立て替えた交通費の振り込みがあった。よかったよかった。




結局、いつも、1,2旅程分の交通費を「立て替えている」。

別に損しているわけではない。

でも、このままもし定年までずーっと「立て替え続ける人生」だとしたら……。

ぼくは人生を通じて、ずっと、立て替える相手がコロコロ入れ替わりながらも、常に数万円のお金の返済を待ち続けていることになる。

あれっ、それってずーっと損してることにならんのかなあ。




なーんてことを、酒の席で、営業職をしている友人に話した。

彼はいった、「そんなこといったら俺は毎月……」

そこで言いよどみ、なんだか表情をズンと暗くして、力なくジョッキを口元に運び、

「いや、いいんだ」

といってそれを飲んだ。

そうだった。

彼のほうがぼくよりもずっと「損」していたわけだ。ぼくはあんまりそこを気にしていなかった。申し訳なかったなあと思った。

だからとりあえずフォローをした。

「い、いや、ほら、貸す立場のほうがさ、おおらかでいられるからさ、借りる立場よりずっといいじゃん」

そしたら彼はいった、「そういえば住宅も車もまだまだローンがおわんねぇなあ」

彼はあきらかに目を落ちくぼませて、力なく小鉢を手元に引き寄せ、なんか松前漬けの劣化版みたいなやつをゴムゴムと噛んだ。

ファイヤーにオイルである。ぼくはあきらめて謝ることにした。




「なんかごめんな……」

「いやいいよ……俺は別に……養育費とかは払ってないから……。」





シベリア化した飲み屋の片隅で、冷戦の色合いが濃くなってきた。

ぼくは次の話題を探す。

飲み会ではお金の話はしないほうがいいな。そうだなあ、”友人”には”悪いこと”をした、”誰も傷つかない話”はないかな、うん、”愛”の話が”いいかもしれない”……。