2019年2月27日水曜日

病理の話(298) うさぎカウントキャリアパス

SNSなどで個別に進路相談されたことが今までに80回ほどある。

相談内容をエクセルにまとめているのでわかる。正確には83回だ。



大半は医学生からの相談で、

「これからの時代、病理医になるというのはどうなんでしょう、リスクが高いでしょうか」

「就職はできるでしょうか」

「おすすめの研修先はどこでしょうか」

みたいなのが多い。



すでに病理で研修をしている人からの就職相談も少し来た。

もう病理医になって働いているのだが、別の職場を知りたいという相談も少数ながらみられた。



これらに共通する特徴をあげることができる。

皆さんもちょっと考えてみて欲しい。

10秒くらいでいい。

10秒数えてあげるから。


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なんの話だったかすっかり忘れたがそうそう。

病理の進路相談の「定型パターン」が何か、という話だ。

ぼくが考える答えは……。



「とにかく多くの人に話を聞かないと、自分のベストの選択肢が得られなくて損をするかもしれない、そういうのはいやだなあ」

という考え方だ。これが共通していると思う。




たとえば、「これから病理医になるのってリスク高いですか?」という質問。

これにぼくが「リスクは他科と変わりませんよ」と答えても、その質問者はまた他の人にも相談をする。

というかそもそも、

「周りにいる病理医にはほぼ話を聴き終わったのですが、あなたはどう思いますか」

という質問が爆裂に多い。




これぞSNS時代というかんじがする。

全世界の知性を刹那的に参照して、かけらをひろいあつめて、いいとこどりをして、自分だけの最強の「師匠」を作り上げるというのが今のトレンドなのだ。

古き良き徒弟制度時代は終わりを告げた。

一人二人の尊敬すべき先達に師事して、じっくり磨かれるというキャリアパスはもうありえないのだろう。




ぼくはいつも同じ返事をする。

「いろんな病理医に出会って話を聞くのがいいんですよ。

すると、ぼくが考えるおすすめ手段ってのは2つです。

1つは、病理医がいっぱいいる施設に行って、一人一人と話をすること。

SNSでもいいんですが実際に会ってみるとその個人が発する雰囲気が『自分に似ているか、似ていないか』を掴みやすいんですよね。

だからより自分よりの情報を見極めやすい。

そしてもう1つは、病理医がいっぱい集まる学会に行って、口頭発表者やポスター発表者の中から、自分が気に入った人に手当たり次第話しかけること。

単施設に行くよりも、幅広い全国の病理医と話ができますからね。」



するとだいたいの学生はそのようにする。

たいてい、いい師匠を見つけることができるようだ。




けれどもぼくは最近考える。

ぼくがすすめる「たくさんの病理医がいる施設で話を聞く」 or 「学会でいろんな病理医に話を聞く」だと、聞き漏らしがあるんだよな。

それは、

「少数の病理医しかいない施設、あるいは病理医が1人しかいない施設で働くのをよしとするタイプの病理医に、話を聞けない」ということ。

あるいは、

「学会が嫌いで、あまり発表をしないタイプの病理医に、話を聞けない」ということ。



人前に出ていきたくない、あるいは、自分だけで働いていたい病理医になりたいと思っている人にとっては、ぼくのすすめるやり方は

「なんか違う」

のだろうな、と思う。




……でもそれはもうしょうがないのだ。だいたい質問者だってわかっていると思う。

ぼくに聞けば、ぼくっぽい答えが返ってくるだろう、ということ。

だからいろんな人に少しずつ話を聞くのだ。人それぞれ、病理に対する思い入れも、人生の投影方法も、まるで違うのだから。