「面の皮の厚い奴だ」みたいなフレーズがあるけれど、実は、面の皮はうすいほうだ。
こないだある医学雑誌を読んでいたら、面の皮(顔面の皮膚)は、たとえば腕の皮膚に比べると、ステロイドの吸収が13倍くらい早いのだそうだ(ごめんなさいうろ覚えですので数字は適当で)。
つまり面の皮ってのは基本的に薄いんだな(だからこそ、皮が厚いといえば罵倒のセリフになるのかもしれないね)。
「ステロイド?」となった人はごめんなさい。そういうお薬があるのです。塗って使うことがあるのです。
このステロイドという薬はとても使い勝手がよく、いろんな病気に利く。
だからついいろんな場面で塗りがちなのだが、実は正しく使わないと、効かない。効果はあまりあがらないのに副作用だけが出たりすることもあるという。
だから正しい塗り方をきちんとわかった上で使わなければいけない。
正しい塗り方を知るためには、ステロイドを塗ったらどれくらい吸収されるのかという知識が必要になる。
したがって、面の皮が腕の皮より何倍吸収がよいか、みたいな話を、皮膚科医は覚えていなければいけないらしい。
はぁーたいへんだなぁー。
その本にはこう書いてあった。
「皮膚科医というのは、目よりも、口が大事なんです」。
皮膚を目でみてどう診断するか、という技術よりも、やさしい口調で丁寧に、患者にことこまかにステロイドの塗り方などを指導できるほうが大事だ、ということらしい。
へええー、なるほどなあー。
ぼくはとても感心してしまった。
病理診断に対してぼくが普段からなんとなく思っていたこともこれに近いのだが、そうかなるほどな、そういう言い方は、いいなあ。
「病理医は細胞を正しく見極める目も必要ですが、それ以上に、細胞のようすを正しく伝える口……ていうかキーボードに正しく打ち込む指が必要なんですよ!」
……なんかちょっと違うかな……?
ところで人間の体の中で一番薄い皮はどこだかご存じだろうか?
実は、きんたまの皮である。
陰嚢の皮膚は、腕の42倍も薬を吸収してしまうらしい。
「水曜どうでしょう」で、カナダの強烈な虫よけスプレーを股間に噴射した大泉さんが悶絶しているシーンがあったが、あーあーそうかーあれは42倍だったからかあー、と、今更ながら腑に落ちた。
なんという記憶方法なのかと我ながら笑ってしまうが。