2020年2月21日金曜日

シャンドラの灯をともせ

今年の冬は雪の降り方がふしぎである。まあ気象というのは必ずふしぎで、理不尽で、無意味で、不合理なものなのだが、それにしてもだ。

ずーっと雪が少なかった。年を越してもほとんど雪かきをしなくて済んだ。

ところが2月の頭に、(札幌としては)信じられない量の雪がどかっと降って、2車線だった道路がすべて1車線になってしまった。道路の雪を脇に避けると、道の左右に雪山ができて、どうしても道幅が狭くなってしまうのである。渋滞がひどいことになる。視界も悪くていろいろあぶない。札幌の交通はたった一日でパニックになってしまった。

そしてぼくもまたちょっと違う意味でパニックとなった。豪雪が降った日、ぼくの車のワイパーが壊れてしまったのだ。

フロントガラスに一晩で大量の雪が乗っかり、ワイパーの収納スペースに圧がかかり、かつそこが一度車内の気温によって溶けてまた固まったのだろう、大量の雪をひっしで落としてからエンジンをかけたはずが、ワイパーの根元が十分に解氷されておらず、エンジン始動時にオンのままになっていたワイパーがぐっと動こうとして変な音を立てた。

ふつうワイパーというのは、左右がきちんと同期して動く。IKKOさんのどんだけーの動きを左右同期してやるイメージである(知らない人はいないだろうが)。

しかし右のワイパーが30度しか動かなくなったのだ。すると、左のワイパーが右のワイパーを無理矢理追い越してしまう。追い越す瞬間に乗り上げるのでバキバキうるさい。追い越した後は「X JAPAN」的な配置になる。つまりはワイパーがクロスするのである。モンスターワイパーXだ。ぼくは運転しながら笑ってしまった。しかし笑い事ではない。雨ならばまだしも、まだ降り続いている雪がフロントガラスを覆うとき、ワイパーがXで留まってしまうと、いちばん大切な運転席前方の視界の、特に右上付近がまったく除雪されない。降り積もった雪は重力に従ってズズッと下に降りていく。そこに無情のXジャンプである。バキバキXだ。これでは運転ができないのだ。

少し走るたびに、コンビニの駐車場などに避難して、かなしくフロントガラスの雪をおとす(それ用の道具がある)。


スノーブラシの画像なんて初めて貼った。まあこういうアイテムがある。このブラシの部分を使ってモンワイXの上に積もった雪をかき落とす。もちろんこの間も自分の頭や肩には無慈悲な雪が降り積もる。あせって落とした雪はすべて自分の太ももや足に積もる。まあ寒いので溶けないから払い落とせばいいのだけれども。びしょびしょにはならないけれども。頭だけはびしょびしょになる。なぜなら冷酷動物であるぼくにもかろうじて10度くらいの体温はあるからだ。

腹が立ってワイパーをひっぱったらベキと音がして、右のワイパーは今度は90度立った場所で停止してしまった。しかしこれで左のワイパーは快適に動くだろう。そう信じて車の中に戻る。しばらく左のワイパーだけがシャコーシャコーと動いている。するとなんとしばらく経つにつれて右のワイパーがうずうずし始めるのである!

「お……おれだって……おれだってワイパーなんだ」

知ったことか黙ってろ

しかし右のワイパーはまた同期しようとして小刻みに震え、ついには滝沢、じゃなかったバキンと音を立ててまた元の水平位置についてヨーイドン、そしたら今度こそちゃんと動くのかな、と期待するではないか。しかしたった2回動いただけであとはまた30度までで動きをやめてしまうのである。引退して口を出さないと決めたのに3回目の会合でつい口を出してしまい結果的に会をぐちゃぐちゃにする町内会の老害みたいなことをする(特定の個人を思い浮かべて書いているわけではありません)。

結局数日後にディーラーに持っていったらワイパー自体はすぐに直った。なんかちょっと歯車からずれただけだったらしい。しかし一度ずれた歯車は直してもまた外れやすいのだという。そのあたりもなんだかちょっと擬人化しやすいなーと思ったし、そういえば今日のブログでは天気の話をしようと思っていたのにずっとワイパーの話ばかりしてしまった。一度歯車が外れると人間様であってもこの程度なのである。