職場でZoom会議をやる。症例検討会もやる。学会の準備もあるし、書籍にかんする悪巧みも多い。そういうのを今まで、安物のヘッドセットひとつでこなしてきた。
しかし今回、とうとう!
マイクを買った!
高いヤツだ。すごくよさそうなやつだ。オーディオテクニカのAT2020USB+、という。16000円以上する。ついでになんか吐息を防ぐシールドみたいなやつと、あと、万力でデスクに固定するアームみたいなやつも買って、マイクを目の前にぶら下げられるようにした。これを導入したのにはわけがある。「日本医学会総会」というでかい学会の準備にあたって、ぼくが何か、音声を使ったコンテンツをやらなければならない……かもしれない、ということで、今までよりも一段よい種録環境が必要になったのである。
で、実際に、このマイクを付けて、ためしにZoomの機能を使って音声のリハーサルをしてみた。すると。
背景のノイズがけっこう気になる。
というか、自分が動く時の衣擦れの音すら拾ってしまっている。なんだこれは、ぜんぜんだめではないか。どうしたんだこのマイク?
……と思っていろいろ調べると驚くべきことがわかった。このマイクは、ラジオ局のスタジオでも使えるほどの高性能で、非常に優れたマイク性能を持っているために、かえって、環境の音をバカスカ拾ってしまうのだという。
だったら安いマイクのほうがよかったではないか!
人に尋ねながらいろいろ聞いてみると、このマイクにはいちおう「この方向からの音ならよく拾うという指向性があるらしい。向きを微調整するのと、あと、Zoomの昨日でノイズを軽減させることで、なんとかきれいな音声が拾えそうな目処がついた。
考え込んでしまう。最近は、ものを選ぶときに、「一番安いやつじゃなく、それなりにいいものを買った方が、長い目で見たときにお得なことが多い」的なことばかり考えていた。外出をしなくなってモノを買わなくなった分、いざ、何かを買うときには多少奮発してでもいいものを買えばいいとばかり思っていたのだ。
でも、マイクという沼……ぼく程度のこだわりのない人間が、さまざまな用途ごとに細かく調整された、専門性の高い領域で、値段が高めであるという理由だけでマイクを選んではいけなかったのである。初心者は初心者らしく、エントリーモデルをもう少しきちんと選び抜くべきだったのかもしれない。だいたいこの16000円もするマイクなんて……
と、ここまで書いて、ふと思いたってマイクの相場を調べてみたところ、たしかにこれより安いマイクは山ほどあるのだけれど、今回のマイクも別に高級品ではなくて、わりとわかりやすいエントリーモデルであった。うーむ。こんなに考えることがいっぱいあるのに、初心者向け、なのか。ぼくは考えこんでしまった。
「わかりやすい医療情報」とかも、ふだん、医療にあまり興味のない人からしたら、ぼくから見たマイク情報なみに、細かくてよくわからん、ってことになっているんだろうなあ。