たとえば「フローサイトメトリー」だ。
フロー:流れる
サイト(cyte, cyto):細胞
メトリー:はかる、計測する
という意味で、直訳すると「流れる細胞を測る」。どういうものか説明しよう。
あなたは今、手に「おにぎり」を持っている。そのおにぎりは、五穀米でできていて、米のほかに麦、キビ、アワ、そして豆が混ざっている。食感が楽しくておいしい。
おいしいのはよいとして、「この中に入ってる『豆』ってなんの豆なんだろう」と気になった。
その場合、おにぎりを少しくずして、いわゆる「米つぶ」をいくつかピックアップして、その中から豆を探して顕微鏡で拡大すればよい。「どんな豆が入っているか」は、それでわかる。
しかし……「おにぎりの中に、米、麦、キビ、アワ、豆がどれくらいの比率で含まれているか」は、顕微鏡で見てもわからない。
これと同じ事は、細胞を検査する際にも言える。
病変部に見られる上皮細胞、線維芽細胞、炎症細胞、血管内皮細胞ほか、さまざまな細胞の中から、「上皮細胞がどのような性質を示しているか」は、顕微鏡でわりとはっきり見定めることができるが……。
Tリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞が「どれくらいの比率で含まれているか」は、おにぎりを顕微鏡で見てもツブの割合がわからないのと同じで、顕微鏡ではなかなかチェックできない。いや、ま、うまくやるとできるのだけれど、コツがいるし、毎回できるわけではない。
\そこでフローサイトメトリーを使う!/
(1) まずおにぎりをばらばらにほぐします。
(2) つぎにツブツブを一つずつパイプに流します。流しそうめんみたいに。
(3) そして流れてきたツブが何なのかを、その都度、高速で判定する。米麦米キビ米米豆アワアワ麦米!
(4) 最後に量比を出す。今回の五穀米にはわりと米がいっぱいふくまれていました。
これぞまさに、
フロー:流れる
サイト(cyte, cyto):細胞
メトリー:はかる、計測する
という検査である。べんりだよ。
なお、皆さんお察しの通り、この検査を一回やってしまうと、「また元のおにぎりに戻すことは不可能」となる。したがって、細胞の成分比はわかるのだが、それらがどのように配列しているのかは確認できない。
したがって、実際の医療現場でわれわれがこのフローサイトメトリーを行う際には、患者さんから採ってきた検体を「すべて使わず、一部だけつまんで、それを粉々にして流しそうめん的検査にかける」。のこりは砕かずに、顕微鏡でみるのだ。病理医もけっこういろいろ工夫しているのである。