2017年3月15日水曜日

靴だけが旅をする

そういえば最近、靴を買いたい。



靴が買いたくなると、街に出て、行き交う人々の足元ばかり見る。

自分と背格好の似た男性を目で追い、上から下までのコーディネートをチェックしたうえで、靴がそれに似合ってるか、似合っていないのかを考える。

ファッション雑誌を買って考えるのもいいのかもしれないけど、38歳のおじさんが参考にするべきファッション雑誌というのは、最近はどれもこれも、「年甲斐もなくナンパしたがるおじさん向け」のテイストをスパイスに利かせている気がして、どうも、しっくりこない。

街で楽しそうに歩き回っている人たちを探して、その人が良かれと思って身に着けているファッションを見て考えた方が、なんぼか気が楽なのである(たぶん一部が北海道弁ですが解説は省略します)。




講演を頼まれて出張するたびに、現地でいちばんスーツが似合っていた人のファッションを覚えて帰ろうと思う。

たいてい、ぼくより背が高く、ぼくより顔が小さくて、シュッとしてシャッとしているから、結局参考にはならないんだけど、それでも、スーツを着た偉い人の中には、ときおり、背は大して高くないけれど、すげぇおしゃれだな、かっこいいな、という人もいる。

スーツもワイシャツも、とても高そうだ。靴だって見たことのない形をしていてすごい光っている。持ってるカバンも、さりげないけど、実にいい。

この人、別に、この一着だけが勝負服ってわけじゃないだろうな。何着も持っていて、今日たまたまこれを着ているだけで、それがこんなにかっこいいってことなんだろうな。

ぼくが今、こんなスーツを買っても、今もってるスーツとの落差がありすぎて、これ着てるときだけ妙に浮き上がって見えちゃうんだろうな。

ああ……めんどくさいな……靴だけでも覚えて帰ろ……。




芸能人を見ているとき、靴に目が行く。

テレビではなかなか靴までは映らないけれど。

髪型やトップスばかりが映るんだけど。

この髪型は、この人だから似あうんだよな。

このトップスを1枚買ったとしても、今あるパンツとうまく合わないだろうな。

何着も持ってる人が着まわすからこうやってなじむんだよな。

ああ、結局、スッと買える可能性があるのは、靴くらいだなあ。




そういえば最近、靴を買いたい。こう、書き出してはみたけれど。

よく考えると、ぼくはもう20年くらい、靴ばかり買いたい。

靴以外は、いらない。