腰痛がひどかったことがある。
座り続けて延々とPCを覗き込んで、がりがりとシェーマを作っていた。どうにも腰が痛い。あっちきしょう、年を取るっていやだなあと思っていた。
腰をもんだりあたためたり、座り方を変えたりしていろいろ対処したのだが、悪化の一途だった。
あるとき、たまりかねて、マッサージ屋に行った。 整形外科にかかれよ、とつっこまれるかもしれないが、うん、医療費高騰が叫ばれる昨今、自分の体を慢性的にどうにかいい方向に持って行きたいと思ったら、ときにはこういう医療保険を使わない市中のサービスも役に立つもんだよ。
……要はめんどくさかったのである。さらっと入れる場所にあったマッサージ屋に入った。保険証もいらねぇし。もんでくれい。
そしたら、こう言われた。
「ふとももの裏の筋肉がすげぇこってますね。」
「ふとももっすか。腰じゃなく。」
「ええ、ふとももの裏ですね。」
「腰はどうなんすか。」
「ふとももの筋肉って、お尻につながりますよね。」
「つながりますね。つながるんでしたっけ。」←(素で解剖学を忘れていた)
「この筋肉、腰のこのあたりにつながってるんですよ。」
「ほう……。」
「座り仕事が多いとおっしゃってましたよね。ふとももの血流がめっちゃ悪いんですよ。長いこと座るでしょう。すると、ふともも、めっちゃ硬くなるんです。」
「ふむ……。」
「するとね、こう、硬くなった筋肉が、腰もひっぱっちゃうんですね。後ろ側に。」
「おっ……。」
「で、腰まわりに負担がかかることになって、腰痛になると。」
「あれっ、腰! 腰出てきました!?」
「出ました。」
「出ましたね。」
「だから、これを治すには、まず、ストレッチをしてください。」
「今ここでバキッつって治すんじゃないんですか。」
「だいたい、バキッって壊れる音ですよね。」
「確かにそうですね。」
「そういうバキバキ整体で、体のずれを治すとか、あれ、かなりあやしいですね。」
「あやしいですか。」
「その一瞬、ある程度よくなったように感じるでしょうけど、原因があってずれたわけでしょう? 原因をとりのぞかないと、またずれますし。そもそもずれをバキッって治すなんて、レゴとかプラモデルであっても、あんまりよくないと思いますよね。」
「思いますね(同調圧力を感じてきた)。」
「だから、やり方を教えますので。あなたの腰痛に効くストレッチは、前屈です。」
「前屈っすか。」
「そう。そして太もものうしろをやわらかくしましょう。そしたらラクになると思います。もんでみて思いました。」
「(いつのまにかもまれていた!)」
こうして腰痛が治りました。整体すげぇって思いました。
世の中にはこのように、腰が痛いのは腰のせいだと思ってたけど実はふともも、みたいなことがあるよなあ……という、糸井重里さんみたいな例え話ふうのいい話にしようかと思っていたんですけど、長くなったんでやめます。