人体の内に、異物・敵・エイリアンが入ってきたとき、それをぶっ倒す仕組みが「炎症」だ。
敵・エイリアンとしては細菌、ウイルス、カビ。あるいは、このような生き物(ウイルスは生き物かどうか難しいが)に限らず、そういうのがくっついている可能性がある砂とかホコリとか花粉とか、あとは酸とかアルカリとか、要は「ほんらい体の中にないもの」を、基本的にヤベーヤツとして認識し、攻撃する。
敵を攻撃するための、「警察」に相当するシステムを人体は「常時」備えている。常時というのがポイントだ。「泥棒を見てから縄をなう」ということわざ(?)があるように、敵が入って来てから防御システムを作っていては間に合わない。
ではその「警察」は普段どこにいるのか?
社会では、何かトラブルが起こると近隣の交番や警察署から警官が駆けつける。ときには巡回中のパトカーが偶然トラブルの現場を目にするということもあるが、ひごろから道にパトカーが大量にうろうろしていたらなんか目障りだし、いかにもぶっそうだし、そもそも、邪魔であろう。用もないのに道を塞がれても困る。
人体も似たようなところがある。体の中を、「警察」にあたる免疫細胞たちが巡回しているわけだが、公道(=血管の中)をうろうろしていることは思ったよりも少なくて、どこかに集まって身を隠していることのほうがどうやら多いらしい。
ではどこに身を隠しているのか?
人体における交番(あるいは臨時派出所)にあたるものとして、二次リンパ小節とか三次リンパ組織とよばれるものがある。ただ、このリンパ組織だけが待機スペースではないらしい。免疫細胞たちは「道ばた(歩道?)に座っている」ことが多いようである。人間社会の例え話だけで人体の仕組みをすべて言い表すことには無理があるのだけれど、ま、だいたいそういうイメージだと思っていれば間違いはない。
体の外側がダメージを負って、体内に敵が入ってくると、まずは道ばたに座っていた警官たちがその場に急行する。そこで一悶着している間に、もよりの交番や所轄警察署(リンパ節)から、長期戦に備えたガチの警察官や、調書をとりにくる部隊などがわらわらと出動してくる。今の数行は、炎症の急性期に好中球やNK細胞、マクロファージがあらわれ、そのあとでリンパ球がやってくることを言い表しているのだけれど、ま、このへん、マンガ「はたらく細胞」を読んでいた方がイメージしやすいことは間違いない。ほんとあれはすばらしいマンガですよ。