2021年5月13日木曜日

ほんとうに職場がよかった

休日出勤すると申請を出さなければいけないので、休みの日に職場にくるときにはIDをタッチしない(出勤簿に記録しない)。こっそりデスクに向かってパソコンを立ち上げる。

もっとも、このさきうちの部門に後期研修医がやってきたら、休日に顕微鏡を見たければちゃんと申請をして残業代をつけなさいと指導するだろう。ぼくもボスがいたときには残業代を申請していた。仕事が遅く、必死だったとき、そうやって上が優しくしてくれたことを今でもいい思い出として抱えている。


でも今はやらない。理由はうまく説明できない。



休日にやること。会議の準備、プレゼンのブラッシュアップ、論文を読んだり書いたりすること。医学雑誌の原稿を書くこともある。

病理診断は平日に終えているので、休日に診断をすることはない。診断能力と診断件数とが釣り合っていないと休日にも顕微鏡を見なければいけなくなるが、幸い、そういうことはない。時間外の診断は精度が落ちる。精度が落ちて困るのは患者と主治医だ。あまりに診断が時間外にずれこむようだと、部門で仕事を振り直さなければいけなくなる。時間外でやるならアカデミックなことに限る。時間外でやるなら患者に迷惑をかけない仕事だ。


なんか少しずつ論理が破綻している気もするが、理路整然としたことばかりしゃべっている人間はつまらないので、たまにはそういう日もあっていいだろう。「理路整然としゃべる人間はつまらない」と言った人間がどれだけ人を傷つけ歪ませるかということを、世の中はもう少し真剣に憂えたほうがいい。




この間の休日、学会発表の準備をしながらYouTube LIVEを見ていた。コメントしたけれど拾ってくれなかった。SNSらしさの中で小さく傷ついたりわずかに喜んだりをくり返している自分は極めて素の状態である。ぼくはだんだん職場で素になれるようになった。ここがたどり着く場所だったのか、と思う。ほんとうは家がよかった……と文章にして見たけれど、自分で読み返してみてもいまいちしっくりこない。