人間がもっている臓器はすべて「一生モノ」であり、どれもこれも生涯使い続けなければいけない。だから、どうしたってガタがくる。時を経ることで臓器がどれくらいへたるかというのをみなさんに実感してもらいたい。人間の体のパーツは経年劣化する。
さあ、どのパーツの話をしようか。本当は、心臓の話をしたい。
心臓にガタがくるというのは事実だ。ただ、この、「心臓は経年劣化します」って、文字にすると怖すぎる。本能が「そこをあんまり想像してくれるな」と叫んでいる。いきなり心臓の劣化の話を書いて読んでもらうのはハードルが高い気がする。
そこでまずは、もう少しイメージが湧きやすい臓器を使おう。なにかというと、皮膚である(臓器と言うと驚く人もいるが皮膚はたしかに臓器である)。皮膚はわかりやすく経年劣化する。なんてったって、目に見えるからね。
赤ちゃんの肌の、みずみずしいもちもちプリプリ感。水分を豊富にふくみ、組織自体がやわらかくて、傷がついても再生力が強く、色素沈着なども来していない状態。
これが、長年にわたって紫外線をはじめとする外界からの刺激を受けることで、破壊と再生、ターンオーバーをくり返し、少しずつ変化していく。表皮の再生スピードが落ち、真皮内には弾性線維が増えて硬さを増し、毛根の活動周期も落ち、メラノサイトの分布とメラニン産生能力・回収能力にもムラが現れる。
それでも100年「保つ」のがすごいと考えるべきなのだろう。テレビ、冷蔵庫、パソコン、どんな家電でも100年は使えない。自律的に再生できる人間の臓器というのはほんとうにすばらしい力を持っている。
でも、できれば、100年生きてもきれいな肌で居続けたいものだ。皮膚の経年劣化を食い止めることは、審美的にすばらしいことだが、体の健康を保つ上でも大切である。皮膚が元気であれば、小さな傷口から細菌が侵入して感染を引き起こすのを防ぐことができる。
有効なのは紫外線対策である。日焼けをきちんと防ごう!
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……このように、「皮膚の経年劣化とその予防」はわりとわかりやすく書ける。イメージを喚起しやすい。なんなら、今日のブログが「病理の話」だということを、みんな忘れているのではなかろうか。あんまり医療の話題っぽくない感。
日焼けを防いで皮膚を若いままに保とうという話は、「美容」や「健康」、さらには「日常系」の話題である。病気がどうした、病院がどうしたという、しかめっつらで医者が説教する話ではない。もうちょっと、しとやかで、常識的な感じ。
ところがこれが心臓となると、とたんに「病気」「健診」、さらに「生活習慣病」ということばでくくられはじめる。
しかし話は似ているのだ。皮膚にとっての紫外線予防が、心臓にとっては減塩食や適度な運動にあたる。
「ほらぁー、すぐ医者はそうやって食事と健康のことばかり言う(笑)」
でもさあー皮膚ですら年取るとボロボロになっていくんですよ。毎日バックンバックン動き続けている心臓だってメンテナンスしないとボロボロになるの当たり前じゃん。おでかけのときにUVカットするのと同じように、お食事のときに塩分カットする、それがどれだけ大事かってことなんだよ。