持続可能なかたちで社会をいい方に変えていこうと思ったとき、参考になるのは、単細胞生物がどうやって進化したかという過程を丹念に追いかけていくことである。
……うそだ、それはさすがにこじつけだ。
でもまあ思う。
人間社会の変化と、生命の進化とはわりと似ているはずだよなあ、と。
根底にあるエネルギー法則とかエントロピー法則とか複雑系の原理とかはそうそう変わらないはずなのだ。サイズ感は違うにしても。情報伝達の過程で社会が変容していく姿は、哺乳類がサルを経由して(?)人間が現れるまでの間に脳がどう変わっていったかを見るのとそんなに違わない、かもしれません(弱め)。
細胞同士が、最初は相互にくっつきあって、一部の栄養などを共有したりした。たぶんした。
そのうち、液体の中に情報を混ぜこんで共有することがはじまった。一部のタンパク質とか、あるいはmiRNA(マイクロRNA)みたいなものは、細胞間で情報をやりとりするのに用いられたんだと思う。
多細胞生物のやりとりにおいては、物理刺激(細胞骨格などを介して隣の細胞と直接やりとりする)、パラクライン(近くの細胞に対して何かを分泌して連絡するシステム)などだけでは情報の拡散ができない。そこに化学波の伝搬をもちいたやや広めの液相情報伝達が取り入れられ、さらに、血管と血液の導入によってホルモンという「最強の飛脚」が手に入った。
そしてこの前後でじわじわ登場したのが神経だ。
神経伝達物質というのは神経と神経の間にあるタンパクだけれども、神経の何がすごいかって、「神経内においては基本的に電位を用いて情報をやりとりする」ってことだ。詳しくは書かないけれど、電気のスピードでやりとりできるわけではない。しかし、カタチある物質でウニャウニャゆっくりやりとりするのに比べれば、神経内の伝達速度はだいぶ早い。
……以上の過程はきっとそのまま、社会にそっくりトレースすることができる。
手渡しでの情報のやりとりから、文字とかわら版を介した近所への伝達、そして道路と輸送システムによる遠方との連絡、そこに出てきた電気的な通信インフラの整備。
こうして並べて比べてみると、社会がインターネットを整備することで、世間に情報が爆発的に増えた、みたいな現象は、サルと人とで思考が爆発的に進化した、みたいなのとそっくりだなあと思う。
人間社会はようやく人の脳に追いついて、今まさに追い越そうとしているのだろう。
で、社会が脳化したら、次は地球外生命体と惑星間でのネットワークができて……となるだろうか? あるいは地球は、宇宙に対しての頭脳の役目を担う唯一の星なのだろうか?
ぼくらが知性だと思っている地球の社会は、実はトリケラトプスの腰のあたりにある「第2の脳」に過ぎず、ほんとうはどこかに宇宙の脳が別に存在するということはあるだろうか?
ぼくらがときおりブラックホールとか宇宙背景放射に興味を示すのは、ぼくらが自分の肌とか髪の毛に気を配るのと同じで、宇宙が自分の体をすみずみまで認識するために地球という脳を用意したからなのだろうか?
……これって病理の話として書いたほうがよかったかな? でも病理じゃなくて物理の話だな。