2022年9月22日木曜日

17進法の奇跡

前より少しのんびりめの5時台に起きるようになった近頃、かえって眠気が増してしまった。そういうことがある。

よく言われていることとして、睡眠には周期があって、たとえば1時間半くらいおきに眠りが深くなったり浅くなったりするという。だから、睡眠時間を30分くらいずらすとかえって、眠りが深いときに起きなければいけなくなって辛くなるそうだ。

もっともこの話は、最新の医学では否定されていた気もする。ただ、まあ、医学は医学だ、医学であり医学でしかない。医学はその時点での妥当な解であるが、ぼくらは何も、問題を解くために生きているわけではない。生きるための目的なんてそもそもない。

医学的には根拠が薄い肌感覚として、「単純に眠る時間を30分だけ延ばしてもあまり効果がない」というのはぼく自身、感じ取っている。これを、睡眠を自分の都合でコントロールしようと思っても、体がそれについてくるとは限らない、と言えば、医学も怒らないし、体もヘソを曲げないだろう。




人間が数を無意識に「10進法」で考えているのは、人間の指が10本だからだ、みたいな話を犬が言っていた。というか犬は『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の話をしており、その中に出てきた話を引用したのだけれど、ま、総和で見れば「犬が言っていた」でよいだろう。この世でいかにも「法則」とか「ドグマ」みたいに見えているものも、実際にはさほどかっこいい理由でそうなったわけではなくて、それこそ「人間の指の本数」みたいな偶然の残念因子によってぼくらが「うまくできてるなあ」と思わされているだけだったりする。そういうことがよくある。

「母なる惑星、地球。暗くこごえた宇宙の中で、なぜこの星だけがほどよく温かく、しかも酸素に満ちあふれているのか? まさに奇跡である」という解釈をするのは勝手だけれど、因果は逆だ。「たまたま温かくて酸素がある環境で生命が育まれただけ」である。宇宙のあちこちをさがすと「もう少し狂った暑さで酸素もぜんぜんないが、生命がいる」という状態はあり得る。ここにたまたま意志をもって観察する人間がいるから勝手に奇跡と感じて騒いでいるだけなのだ。地球外生命体すべてが固有の奇跡を持っているだろう。その奇跡は人類からは推しはかりようもない。

「我々がたまたま17個の集積回路を相互接続して荷電溶媒の濃度勾配をコントロールする生命だったからこそ、4つの恒星によって昼夜昼夕昼夕昼夜朝夜朝夜朝夜朝昼夕の周期で一日を過ごすこの星に適合できたのだ、奇跡だ!」

みたいな話が宇宙のどこかで交わされているだろう。それを奇跡と呼ぶならば、ぼくが睡眠を30分延ばしてより快適な睡眠ライフを送ることもまた、「たまたまフィットしただけ」という意味で確実に奇跡なのである。いや、送れてないのだけれど。