2019年4月11日木曜日

病理の話(313) 本もDNAも大事に読みましょう

人間の体を形作っている「レゴブロック」がある。

何かというと、「細胞」のことだ。

細胞の中にはほとんどの場合、「核」がある。

核は細胞のコントロールセンターだ。核の中には、細胞の働き方を決定するプログラムが入っている。

プログラム、すなわちDNA。

このDNAを、細胞の中にあるさまざまな装置が読み取って、さまざまなタンパクを作り上げる。タンパクは武器であり防具であり、服飾雑貨でもある。DNAに書かれたタンパクをいかに作るかが、細胞の挙動を決めていく。




さてこのプログラムだが、あらゆる細胞の中に「フルセット」で入っている。

ぼくはこのプログラムをよく広辞苑に例える。

広辞苑にはさまざまな言葉が収録されているが、これを買った人がみな、広辞苑を通読するわけではない。広辞苑の一語一句をすべて読み切って活用している人はめったにいないだろう(まったくいないとは言わないが)。

おのおのの細胞がもつプログラムは「フルセット」だが、実際にそれぞれの細胞が使うプログラムは「ごく一部」に過ぎない。

自分が使うプログラム以外のページは、のり付けされている。

墨で塗りつぶされていることもある。

逆に、ある細胞が頻繁に使わなければいけないページについては、しおりが挟んであって、しょっちゅう開きやすいように工夫されている。



すべての細胞はプログラムをフルセットで持っているのだが、この、しおりの場所が異なり、のりづけの場所が異なるから、それぞれ違うプログラムだけを発動して、仕事を分担し、棲み分けることができる。

膨大な情報をもつ広辞苑のどこを開きどこを閉じるか。

ページの開き方を制御するシステムを、エピジェネティクスと呼ぶ。





生命はDNAという4進法(A,T,G,C)のプログラムで動いている、という概念は正確には正しくない。

エピジェネティクスによる制御で、プログラムのどこを読むかが別に制御されている以上、生命は4進法以上の情報を使いこなしていることになる。

エピジェネティクスについてはこちらも詳しい。一度読んでみるといい。

https://www.1101.com/gakkou_darwin_yokoku/2019-04-03.html

さすが仲野徹先生は本職であるなーと思う。