2019年4月26日金曜日

今度特別編を書くのです

顕微鏡のレンズ周りに、パラフィンと呼ばれるロウのようなものがぱらぱらと、粉状になって落ちているので、ときどき掃除をする。

カメラのレンズを手入れする時に使うブロワーで、ボヒュボヒュと吹き飛ばしてしまうのが簡単だ。床はきちんと掃除機をかける。

ブロワー。

これほど風がぶろわああっっと出てきそうな名前もあるまい、と思う。

ブロー、という言葉だろ? 元は。髪をブローするみたいな。

ぶろおおおって風が出る感じがするもんな。わかるわかる。




でもボディーブローというときの「ブロー」はあんまりブローっぽくない。どっちかというとボディーゴボォとかボディーズボォとかボディーグフゥという感じではないか。

あのブローはなんのブローなんだ。

このへんでようやく検索をすればいいと気づく。




ググるとやはりボディーブローのブローも、髪をぶろーするのとおなじ「blow」であった。

なおラップの世界で用いられるblowはsucksと似たような、クソっぽい意味合いを含んでいるようだが、ここんところを深掘りはしていない。




なんでblowが「風が吹く」と「なぐる」の意味を持つのだろう。

どうやってググればいいのだ。語源とか由来とかと重ねて調べてみればいいのか?




ケンブリッジディクショナリー




だめだ。とにかく風が吹くっぽい意味と、殴るという意味が並列されているだけだ。ぼくが知りたいのは、なぜblowという同じスペルに、あまり似通っていないふたつの意味が重なっているかということなのだが……。




ようやく、

「古英語blāwan(風が吹く)、ラテン語flāre(風が吹く)と同系」

という記載だけはみつけた。吹き飛ばす、なくしてしまう、エリミネートする、みたいなニュアンスから後に「殴り飛ばす」と交差してしまったのだろうか。とにかくblowという言葉は調べれば調べるほど多くのニュアンスが出てくる。

しかしここまでくるともはや、言語学とか歴史的なニュアンスをわかっている人でないと太刀打ちできないな、ということがわかる。





最近よく言うし、このブログにも何度か書いていることなのだけれど、グーグルを含めた検索システム、さらにはインターネットというデータベース自体が、「歴史的な積み重ね」に対してかなり無力であるということが実感される。

誰かが書いた「歴史を考慮して、考察した文章」にたどりつけばいいが、グーグルに落ちているものだけを使って歴史を考察しようと思っても、昔のデータにはなかなかたどり着けない。情報量が爆発的に増大したこの10年くらいのノイズが強すぎる。

ネットに落ちている情報は、直近の10年のインフレーションが強すぎるのだ。20年くらい前の情報を探すためには、10年前に「10年前のことを書く。」とやってくれた人がいないと、まず見つからない。




巨人の肩の上に立つとかいうけれど、巨人のひざのあたりは、インターネットだけではほとんど評価できない。ひざがあったことはわかるが、ひざを見に行くことはできないのだ。

そんなことを考えながら、昨年、「巨人の膝の皿の陰」という連載を書いた。まあ大多数の人はみることができない雑誌なのだが……。いずれ何かの折にでも公開できたらいいなあとは思っている。