ソニーの、首にかけるタイプのBluetoothワイヤレスイヤホンを使っている。
特に不満はない。
仕事中、イヤホンからメールの着信音やSlackのアラートが鳴るのがべんりだ。
顕微鏡をみていても連絡にすぐ対応できる(デスクの周りにいれば)。
強いて言うならば、意外と充電がもたない点は不満かも。
午前中に充電して、午後使い始めると、夜にバッテリーが切れてしまう。
だから、有線のイヤホンも未だに使っている。ワイヤレスの充電が終わったら有線に切り替える。
有線イヤホンはゼンハイザーという会社のやつを使っている。
一番安いやつではない。
それなりに高い。
けれどもバカみたいに高いものではない。高級イヤホンとまではいえない。
ぼくはイヤホンから流す音量をかなり小さく絞っている。業務中に話しかけられることもあるし、電話だってかかってくる。
そうなると、あまり高価なイヤホンを買っても、その音質は十分には享受できない。
あまり強力にノイズキャンセルするのもまずい。
そういうあれこれがあって、選んだ。
ゼンハイザー、5年ほど使ったろうか。
今日、とうとう、左側から音声が出なくなった。断線したのだろう。
まあよくもったほうだと思う。毎日使っているのだ。
車なら2回は車検に入っている。
いちどもメンテナンスせずに5年持つ道具なんて、もう、この世の中には少なくなってきている。
イヤホンを買い換えようと思ってAmazonを開いた。われながらだいぶ横着になったなあと思う。
「本は書店で買う、アマゾンは使わない」
と、あれだけ普段からアピールしているわりに、本以外のものについてはアマゾンを便利使いしている。
さまざまなイヤホンを探して画面を右往左往する。
おすすめが表示されても、それをなぜおすすめされているのか、理由がわからない。
先日ピエール中野氏が紹介していたAVIOTのワイヤレスイヤホンを以前に買ったから(職場では使わないのだ)、AVIOTがちらちらと目の端にうつる。
でもぼくがほしいのはあくまで有線のイヤホンだ。
だって無線のはもうあるんだから。
いったん、アマゾンをはなれて、Googleで、「イヤホン 有線 おすすめ」と検索する。知らない有名人や手練れの記者達が、ぼくにイヤホンをすすめてくれる。
ぼくは結局何がいいのかよくわからず、今まで使っていたゼンハイザーの同じモノを、アマゾンで探し当て、クリックして、買った。色すらも前と同じにした。
ぼくはネットの買い物を便利で使いこなしているつもりでいる。
けれども実際、よく考えてみると、AIがどれだけ高度なおすすめをしてくれても、結局はAIのいうことを無視して、今までと何も変わらないものを買ってしまう。
AIが進歩しても、使う方の脳が保守的だから、恩恵を十分に受け取っていないのだ。
性格的な問題がある。
3杯目はビール以外の飲み物にしようかなと思っても結局ビールを飲んでしまう。
今週の土曜日はラーメンを食おうかと思っていても結局うどんを食ってしまう。
白のTシャツはGUで買ってしまう。
行動変容の加速度が限りなくゼロに近い。
慣性が強すぎる。
そういえば、ぼくはそもそも5年前に、なぜゼンハイザーのイヤホンを買ったのだったか?
たしか、おそらく、ツイッターで、少し仲の良い人が、ゼンハイザーいいですよ、とすすめてくれたのではなかったか。
ぼくの根本のところにある、一番変容しない部分というのは、「なんかプロっぽい人が、自分より詳しい人が、にこっと笑ってすすめたものは、ひとまずそのまま使ってみる」というものだ。
だからきっと5年前も、だれか、ぼくよりはるかにイヤホンに詳しい人のいうことをそのまま聞いたんだ。
そこは変わっていないと思う。
今後、AIを使いこなすためには、この、「人のよさそうな先達にたずねた結果を盲信する」という行動を変容する必要がある。
なかなかしんどいのではないかという気がする。地球上での等速度運動は摩擦に負けるから、知らず知らずのうちにそっと減速していく。ぼくはもう減速し始めているはずなので、そろそろ、変容しないといけないと、わかっているはずなのに。