2019年12月20日金曜日

病理の話(397) 医書の話をします

医学書は高いので、買ってからやっぱり要らなかった、となったときのダメージがはんぱない。

なので、本屋で立ち読みすることはけっこう重要だ。

立ち読みっていうか、いっそ、買わずに図書館などで借りて済ませれば? と言われることもあるのだが、自分の専門領域の知識を一度読んだだけで記憶できる人は基本的に存在しない(今の医学知識の総量はとんでもない量である)ので、

・自分に合っていて
・自分が使うとわかっている本

については買ってしまった方がラクでよい。結局はそのほうが自分のためになる。


立ち読みにもコツが必要だ。

手元に置く以前の段階で、チェックしておきたい項目がいくつかある。

レイアウトやフォントが読みやすくて自分に合っているかどうか。

「フルカラーかどうか」はこの際あまり関係ないので注意しよう。

ただし、看護学生向けの本などで、すみずみまで色あざやかなフルカラーでなお「読みやすい」場合は、編集者やデザイナーが細やかに目を通しているということでもある。その方が信用できる、ということも確かにある。



複数の本を読み比べるときには、何かひとつ、「同じ項目」をさくいんで検索してみるといい。

たとえば病理学の教科書だったら「出血性ショック」の項目を読み比べてみるのだ。

全体を読んで雰囲気を比べるのは大変だが、あるひとつの項目を比較するならわりと簡単にできるだろう。



……みたいな、一般的にもわかりやすい「立ち読みの仕方」についてはまあいいとして、実はぼくが本を選ぶときにこんなことよりも圧倒的に頼っているやり方が別にある。

それは、「実際に学会や研究会などで話を聞いたことがある人の本を買う」ことなのだ。

完全にぼく向けの話であり万人におすすめするやり方ではないのだけれど、ぼくはとにかく、「何度か会ったことがあって、声を聞いたことがある人の本は、著者の声が聞こえてくるような気がしてすごく読みやすい」のである。

つまりは知っている人の本を買う、ということだ。



もちろんこの技が使えないタイプの教科書はいっぱいある。洋書とかだと著者に会ったことはまずない。

けれども日本人の医者が日本人の医者のために書いた本の場合、そこそこ知っている人がいる。あるひとつのジャンルで、どの教科書を買うべきか迷ったら、声がわかる人の本を買うとその後なんども参照して役立てることができる。



学会などでセミナーを聞いて「ああー、この人のいうことわかりやすいなー!」と思ったらすかさずその人の本を買うのだ。これで外したことは一度もない……。




ただおもしろいことに逆のパターンもある。

本で先に知った人の話を聞きにいったら意外とおもしろくなかった、みたいなこと。

こういうときは先に買った本が色あせてしまうから不思議だ。ある意味もろ刃の剣なのかもしれない……。




以上の内容はおそらく一度ブログに書いてるけどまた書いておく。何度か書くことが大事だからね。