2021年2月3日水曜日

病理の話(501) 爪も細胞がつくる

爪ってなんなんだろうな……と思ってもなかなか検索するところまではいかない。


でもたまたま勉強する機会があったのでいろいろ本で読んだ。爪って角質なんだよ。


角質って、皮膚の上にのっかっていて、元は細胞だったんだけど、「はがれ待ち」みたいな状態になっている特殊な細胞、というか「細胞の死にかけ」みたいやつであるな。表面に汚れや傷、ばい菌がついても、定期的にこの角質がポロポロ落ちていくときに、汚れも菌もいっしょに落ちていく。新陳代謝するついでにシーツ交換していくみたいなものだ。うまくできてるなあ。


カカトが乾燥でガッサガサになったときに、ヤスリみたいなやつでゴリゴリやってツルツルにするんだけど(しない?)、このときゴリゴリ削れてくる部分も角質。そう、角質というのは、皮膚の場所によって、微妙に付き方が変わっているのである。よくコントロールされているものだと感心する。


さて、爪だ。爪の根元にある細胞は、ほかの皮膚の細胞とは違って、表面に角質を形成する力がやたらと強い。そしてこれは知らなくてもいいのだがほかの皮膚とは違って「ケラトヒアリンを有する顆粒層が存在しない」という細かな差もある(本当に知らなくていいと思う)。この細胞を爪母細胞という。ツメハハ細胞ではなくてソウボ細胞だ。


爪母細胞はじゃんじゃん角質を作って横方向に積み上げていく。普通、垢というのは体の表面に向かって積み上げていくからここでは方向の違いも生じている。なお、そのまま伸ばしていくと、爪と皮膚との間にはスキマができてしまうだろう(田舎のヤンキーの前髪みたいにだらしなく伸びる)。だから、実は爪というのは三層構造(!)になっていて、爪ミルフィーユの一番下の部分は、爪がくっついている部分の皮膚から直接生えてくる、らしい。爪ってなんとなく指の先端方向に伸びるイメージだったけど、実は肌からもじわぁと生えてきてたんだな。だから爪を剥がすと痛いのか(想像するだけで痛い)。



いやーメカニズムが精巧すぎる……いったいどうなっているんだと感心するが、人体の表面にはほかにもおもしろいことになっている部位がたくさんある。例えば毛だ。髪の毛や体毛、これらもある意味「皮膚の中に混じっている特殊な細胞群」から生えてくるわけで。


あとは歯! 歯はほんとうに特殊だよな。こんな硬いものをやわらか人体が作り上げていくメカニズムもこれまた複雑でおもしろい。というかこの話はぼくよりも歯学部病理の人のほうが詳しいんだけど、いずれぼくなりに書いてみよう。でも今日は爪で終わりにしておく。ツメハハ。