2021年2月24日水曜日

ずくめ

 威力業務妨害的な案件の相談に乗っていて少々疲れた。理不尽なことは世のあちこちに転がっている。


「身に覚えはないんですよね? 潔白ってことでいいんですよね? 我々は堂々とあなたを守っていいんですよね?」


と、たずねられるほうも、そしてたずねるほうも哀れだと思う。


凪いだまま暮らせない。ぼくらは情報の海に生きている。





昨年の秋に買ったサボテンは、冬になってから一度もつぼみをつけない。それまでは何度も花を咲かせていた。パッと見では今も元気にトゲトゲしており緑もみずみずしいが、花を咲かせないということはやはりどこか消沈してはいるのだと思う。サボテンがサボテンであるからと言って元気満タンであるとは限らない。さぼってんのかもしれない。




Zoom会議が増えたことはいいことばかりだが、いいことずくめとまでは言えない。ばかりとずくめの差というものはある。さしあたって問題点をひとつ挙げる。みんな、メールで済む案件をZoomでやろうとしていないか? もっと文章を練って、もっと一往復で相談が終わるように命題をわかりやすく立てて。そうすればいちいちほかの用件をスリープさせてモニタに向き合わなくても済むのだ。没入してから放つ文章のほうが情報量は多い。「メールでは伝わらないので……」みたいなことを言う人は、ぼくが文章に対して向かい合う気を削いでしまう。Zoom会議ばかりの企画から出てきた文章はどことなく表面がつるつるとしていて、最初の数行を読み終わるとあとはなんだかもう「なるようになっている」。衝突が足りないと感じる。摩擦が足りないと感じる。





冬靴は一昨年の秋に13000円出して買った高級品だ。モッコモコしている。3月までバリバリ働くはずだった。今年の札幌は雪が解けるのが早く、なんだかもう、夏の革靴でもいけるんじゃないかと思わせる日がある。もちろんまだまだ雪は残っているのでこのモコモコを履いて悪いことは何一つない。悪いことは何一つないが、いいことずくめとまでは言えない。早くいろいろ身軽になりたいものだ。それは靴ひとつとっても言えることである。