2022年2月21日月曜日

オルグの割合を下げる

「閾値」という言葉を見ると加藤茶が出てきてくしゃみをする。イーッキチ、である。


加藤茶のくしゃみのような「キラーギャグ」は、使い所が肝心だろうな、ということを今さらながらに思った。使いすぎれば飽きられるし、出し惜しみすると忘れられる。「8時だョ!全員集合」の番組内で、場が温まって、ここぞ! というタイミングで出すから国民に知られるギャグになったし、あらゆる場面でひっきりなしにイッキチイッキチやってたら寒かろう。イッキチの頻度を調整するのが巧かったからこそ、加藤茶はお茶の間の人気者になった。イッキチを出すか出さないかの判断がうまかった。つまりは「イッキチの発動閾値の設定が正しかった」ということ。イッキチ閾値である。



ダジャレだけで何行書けるかと思ったけれどちょっとしか書けなかった。ふくらまなかった。そういうものである。



ダジャレで思い出したのだが先日ちょっと印象的なTwitter Spaces(ラジオ的なやつ)を聴いた。相互フォローのニンパイさんという人がいて、ニンパイさんというのはたしかニンニンパイセンの略なのだがまあそれはいい。おしゃれな人だ。いいことを言う。あとずっと言葉遊びをしている。そのニンパイさんが、作業をしながらぶつぶつ独り言を言うだけのスペースで、このようなことをおっしゃっていた。


――ツイートを「ライフログ」として使っている人と、「オルグ」として使っている人と、「エスプリ」の発露の場として使っている人がいる――


これには唸った。以降、ずっとこのことを考えている。

たしかにそうだ。

TwitterというSNSはいまや、ライフログ or オルグ or エスプリのどれかに収斂しているように思う。


ライフログというのはそのまま「ツイ主が今なにをやっているか」であり、Twitter本社が掲げる「今なにしてる?」を真っ正直にやること。


オルグというのはなにやらキナ臭い言葉で、いろいろと含意もあるがここでは単に「自分の活動に入ってこいよと勧誘する」くらいの、本来の意味を指すと考えればいいだろう。


エスプリというのはなんだろうな、これが一番むずかしいと思うのだが、気の利いたことを言うというか、あそびの部分というか、ダジャレも入ってくるが、ダジャレの中にもエスプリとそうでないものとがある気はするけれど、そういうのをぜんぶひっくるめてのエスプリなのだろう。


この分類はじつにうまくできていて、たとえばぼくは、ある人のツイートがオルグばかりだとうんざりしてリストから外してしまうし、エスプリばかりでもうーん、となってしまう。三者のバランスが大事な気がする。「ツイパラメータ」としてはこの3つがあればだいたい事足りる。

ツイッターアカウントを見るとき、そこにどれくらいライフログが含まれていて、どれくらいエスプリがあるか、その上で何にオルグしようとしているのか、みたいなことを、これまでのぼくも(そういう単語では考えていなかったが)ずっと気にはしていた。

たとえば、ひたすら自分の所属するチーム・団体・あるいは信じる念(信念)の話ばかりをツイートする人は「オルグ型」であると言える。オルグ型のツイッタラーからライフログ感が一切感じられないとき、ぼくはある種のうさんくささを感じ取る。なんというか、人らしさがわからなくなるというか、こいつとにかく自分ちに引き入れようということしか考えてねえんだな、みたいな、もしくは、ツイッターを商売でやってるなあ……という意図が透けて見えてしまう感覚。

一方で、えんえんと「ライフログ型」の使い方をしている人だと、それはもはや公開日記と何も変わらないわけで、芸能人やプロスポーツ選手だとライフログだけでも多くの人が見たいと思うものであるが、ぼくらはたぶん他人のライフログを無限に集めて喜ぶようにはできていない。害はないが逐一チェックをしようとも思わない。仲良く別個にやっていこうぜ、くらいの気分になる。

そして、「エスプリ型」だけだとこれまたうっとうしいアカウントになる。名言しか言ってないアカウントはしばしばバズり倒してフォロワーを集めているけれど、どうにも好きになれない。

ライフログ・オルグ・エスプリのバランスはアカウントごとに異なるが、おそらくはその人自身が考える「社会と自分との繋ぎ方のバランス」に落ち着いていくものであろう。ライフログとエスプリとが8:1.5くらいのバランスに落ち着いて、あまった0.5のところに自分の所属している何かを紹介するオルグが紛れ込むような人のツイッターアカウントと、ライフログが2,エスプリが2,オルグが6くらいのアカウント、これらはもう、どちらかになろうと思ってなれるものではなくて、「そういう人」「そういうアカウント」だとしか言いようのない個性である。

芸能人はライフログ9、エスプリ0.5、オルグ0.5くらいで、ごくたまーに自分の出ている番組や関連グッズなどをオルグ的にツイートするが大半はライフログだ。そういうのがたぶんフォロワーに刺さる。

一方で、企業公式アカウントだとこのバランスではだめで、オルグ9、エスプリ0.5、ライフログ0.5くらいのほうがかえって誠実に感じられたりもする。

では芸能人でも企業公式でもない単なる一個人だとどうすべきか、というと、「こうすべき」はなくて、その人らしさがこれらの割合に出てくるだけなのだろうな……ということを思う。ぼくは最近、意図してライフログを増やしてオルグを減らしていた。ぼくの場合のオルグとは「いい医療情報を出す医療者をRTすること」だったりするのだけれど、ああ、これって一種のオルグなんだな、と気づいてから、うーん、ま、ほどほどにしよっかな、みたいな気持ちになっているのである。伝わるかなこの話。まあいいか。イッキチ。