モンゴル・ウランバートルの病院に勤める病理医たちがカシミアのマフラーと手袋を送ってくれた。ぼくが月に1度のペースで病理診断の相談に乗っているのでそのお礼だという。水くせぇな。
マフラーと手袋は「GOBI」というブランドだ。チンギスハーン国際空港で見たことがあり、"the world's largest cashmere store"(世界で最も大きなカシミア販売店)と高らかに宣言されていた。
ホームページはすごくきれいで、カシミアゴートが笑っている。
包装はどことなく「一昔前の百貨店」を思わせるけれど、箱を開けてみると中にはとても上品な色合いのマフラーと手袋が入っていた。帰宅して妻に見せると「それはすごくいいやつだよ、コートに毛つくから気を付けて」と言われる。ああ本当にいいやつなんだとそこで納得してあらためて感謝した。
そしてプレゼントの中にはもうひとつ、「Golden Gobi」と書かれたナッツ入りチョコレートが入っていた。これも空港でよく見たおみやげだ。とにかくモンゴルではチョコ推し、そしてGobi推しである。探してみるとインスタがあった。
チョコのパッケージの紙質が、まさに「紙」というかんじで、日本のラミネート過剰なパッケージングと違うため、一瞬だけパチもん感を覚えて少しひるむのだが、食べてみると甘すぎずビターすぎず、なんともおいしい。
くりかえし出てくるGobiとはもちろんゴビ砂漠のことだ。国を挙げて大事にしているのだろう。日本に置き換えてみると、マフラーやチョコレートのブランドに「富士」が付くことはあまりなさそうだし、worldでlargestと表記することもないように思う。
はじめてウランバートルを訪れたとき、モンゴルの内視鏡医と病理医がぼくと上堂先生(大阪)とを日本製のランクルに押し込んで、「モンゴルらしい風景を見せてあげるよ!」と言って4時間(!)走って「モンゴルっぽい場所」まで連れて行ってくれた。馬に乗ったり、ゲルの中に入ってウドン的何かを食べさせてくれたり。
えっ、ここまでしてくれるなら彼らが北海道に来たときはぼくは4時間走って釧路湿原に連れて行かないといけないじゃないか、とびっくりし、恐縮した。なおこのときのウドンに当たったと見えて、ぼくは帰国直後、新千歳空港を出て自分の車に乗ったころからお腹が痛くなり、そこから2日ほど寝込んだので(発症が少しずれていたら入国できなかった可能性もある)、写真はいっぱいあるがモンゴルでの記憶はいまいち曖昧になってしまっており、写真を見ながら「そういえばこんなこともあったんだったか……」とあとから振り返って記憶を半分くらい捏造した。
じっさい、写真をよく見るとぼくらが乗っているのはウマではなくラクダなのであった。