2023年6月20日火曜日

豚こま肉100g118円

自分の話す内容が相手に伝わらないなあと思ったときに、その相手とのコミュニケーションを早々にあきらめて「次のわかってくれる相手」を探しに行くムーブ。

「次」を求める回転数がとても早くなっている。すぐにあきらめる。もうちょっと粘ってもいいのでは? くらいの感想を持つ。それはぼくがネットリ年を取ったからだろうか?


もうちょっと粘ってもいいのでは?


「はい次」「はい次」と、自分の話の通じる相手を求めて渡り歩いていくクレペリン検査ムーブ。あからさまだなあと感じるのは「専門家」だ。ぼくの経験上は「医療の専門家」が多いが、別に医療じゃなくてもいい、政治でも、スポーツでも、歴史でも、なんでもいい。

何かをしゃべりはじめて、相手のリアクションが弱いだけで、もう詳しい説明をあきらめてしまう。

医療情報なんて「いかに多くの人にべんりに使ってもらうか」が第一義だと思うのだが……「何を言ってもワカラナイ人にはそもそも語りません 代わりにケンカします イッツエンタテインメント!」みたいなことになっている。どうなのと思う。


「あれ? 伝わらない」と思ったら自分に追加インストールすべきは「コミュニケーション補助プラグイン」であり「簡易翻訳アプリ」であろう。しかしなぜかそこに「相手を効率良くくさして溜飲を下げる怒-GPT」みたいなのをインストールして、専門家である自分の言葉が通じないのは相手に原因があるとばかりにバチギレて、次の狩り場に移動する。

自分の語った内容を微妙に違ったニュアンスで聞き取った人に対して、ものすごい勢いで怒る。そんなに怒り狂ったら相手と二度と関係築けないだろうと心配になるのだが、違う、そもそも相手と二度と関係を築きたくないから破壊によって会話を打ち切るのだ。

「前提情報がない相手とは高度な話はできないよ」みたいな地味に失礼なことを平気で言う。コミュニケーションってもうちょっと幅広くて豊潤だったはずなのだが。

サブスク的だ。気に入るまでどんどんザッピングする感じ。マッチングアプリ的でもある。

そうやって自分の言葉の通じやすい相手とばかりやりとりするので、言葉がだんだん先鋭化していく。先が尖って奥まで浸透するようになる。細いからちょっと離れるともう影響を見ることもできなくなる。


そういえば……一時期もてはやされた……「ノンバーバルコミュニケーション」って、あれ、どうなった? SNSだとノンバーバルの伝達が込み入るから(※ないわけではない)、いつのまにか語られなくなったような気がする。ノンバーバルな部分で測っていた相手との距離感を、SNSでは文字や図を使って補正しなければいけないのだが、そういうところを放棄して「俺の言葉が伝わらない程度の知能で俺と会話するな」みたいなことを言い出す専門家が多い。言葉だけで伝えることはできないよ。言葉だけでがんばる専門家(例:哲学者)だってその点はあきらめている。言葉は「伝える」以外の役割があって(例:「自分で自分のことをわかる」)、言葉を極めれば伝わることのプロになるわけではないのだ。



人間の脳ってそんなに機能の差が大きいものではないと思う。地頭の良さがどうとか言っている人がいるが人間どうしの微細な差をそこまで大げさに拡張しなくてもよかろう。われわれがサルやゴリラ同士の顔の区別がつかないように、地球外生命体から見たら人どうしの地頭の差なんてたいしたものではない。となれば、ぼくが今気になるのは、「われらみな同じ脳を持つ仲間なのに、どうしてここまで伝わらずにずれるのか、ぼくが知ってること、常識だと思っていることの代わりに、その脳に何を入れて、ここまで何をして、何を見て暮らしてきたのか」の部分である。ぼくの言葉が一瞬で伝わらないとしたらそれにはいくつかの理由があって、

1.ぼくの伝え方がへた

2.ぼくの文法と相手の文法が異なっている

3.ほか知らんけど列挙するんなら2項目だけだとカッコ悪いからいちおう3を置いとく

って感じなのだけれど、「1.」は常に改善をこころみるとして、「2.」だったとしたらそこをきちんと切り開いて解析したらなんだか楽しそうではないか。



楽しそうというか……。

たとえば、同じ脳を持っているにもかかわらず、あからさまなニセ医療を商売の道具にして人をどんどん不幸に陥れながら小銭を稼ぐことを「よしとする人」はいったい脳の中で何をどのようにこねくり回しているのだろうということが真剣に気になる。そこにどう介入したら何を変えることができて、何は変わらないのか、みたいなことこそを、今のぼくは真剣に考えたくてしかたがないのに、多くの自称専門家たちは、「俺の言葉が通じない場所では話をしません。」みたいなつまんない切り落とし方をする。コープの厨房の店員でももう少し丁寧に肉を切り落とすと思うけれど、今の専門家たちはみんな、すごくもったいない切り落とし方をする。