2021年1月7日木曜日

病理の話(492) ヘパラン硫酸プロテオグリカンの免疫染色用抗体を買って試して失敗したことがあります

人間の体をつくる「細胞」は、タンパク質でできている。


タンパク質というのは、わかったようでわからない言葉なのだけれど、個人的には「レゴのカタマリ」として認識してほしい。レゴブロックひとつひとつをアミノ酸という。アミノ酸レゴブロックはぜんぶで20種類あって、これらを組み合わせて、おうちとかお城とか、消防車とかパトカーとか、ダースベーダーの乗っているアレとかを作ることができる。作り上げた構造物がタンパク質。タンパク質をさらに複雑に組み上げることで細胞ができていく……。


と、このあたりは最近の高校生くらいが学校で習うようになった。


で、このタンパク質はだいぶ細かく研究されているのだが、今はさらに話がマニアックになっていて、「タンパク質の表面に張り付けるシール」の部分に注目が集まっていたりする。




レゴブロックのでかいやつをゴリゴリ作ったことがある人は、たまーに、レゴの表面に「目」とか「紋章」などのシールを貼ることがある。レゴだけでは細かな模様が作りきれないわけで、そういうときにシールの力を借りる。


レゴの例えをやめてガンダムのプラモ(ガンプラ)の例えにしたほうがわかりやすいかな? ああいうのって、けっこう、作り上げたあとに、シール貼るよね。




で、アミノ酸を組み上げて作ったタンパク、そのタンパクを組み上げて作った細胞にも、実は多数のシール、もしくはタトゥー、さらには吸盤、もしくは……カビ? 表面に生えるカビ的な? そういう、「プラスアルファ」がいっぱいくっついているのだ。


プラスアルファには本当にさまざまなものがあるのだが、最近ぼくが読んだ本で取り上げられていたのは、「糖衣」。


「正露丸糖衣A」というのを聞いたことがある人がいるかもしれない。あれはクソまずい正露丸の周りをお砂糖でくるんでいるという文字通りの「糖衣」なのだけれど、細胞の周りをとりまくのは単なるお砂糖ではなくて……


糖脂質、あるいは糖タンパクと呼ばれる、「タンパクを修飾する、非タンパク的なにか」なのである。




この糖衣の部分が生体においてけっこういろんな役割を果たしているらしい、ということをこの15年くらい激しく研究している人がいて、ぼくもそういう人たちの存在はよく知っていた。なんなら、病理検査室で、この糖衣の部分に着目して、何かいい検索ができないかと試したことがある。


……ところがこのシール部分の解析が……、難しい!!!




イメージでいうと。レゴを手に取って調べているうちにシールがはがれてしまうというか。


シールがレゴブロックより圧倒的に小さくて薄いから、普通の検索方法では歯が立たないというか。




で、ぼくは結局、7年くらい前に、通常の病理検査室がやれるやり方で、一部のグリコカリックス……「糖衣」を研究するのをあきらめてしまったのだけれど。


世界にはそういう難しい世界でめちゃくちゃがんばっている人たちがいて、そういう人たちの書いた本などを読んでいると、「おおおおーあの難しいことをよくやるなあ……」と、感心してしまうのである。



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