2023年8月31日木曜日

アクション大魔王

「リアクションではない原稿」をひとつ書き終えた。ほっとしている。まだ提出はしない。何度か読み直してから送る。とはいえ数日は待たない。数時間後には送信する予定である。


この連載のテーマは、ほぼ自由。縛りがない。ぼくはどちらかというと特定のテーマを与えられてそれについて書く(リアクション的に書く)ことの方が多いのだが、こちらからテーマを出していい原稿は、このブログを除けばわりと珍しい。


2ヶ月にいちど〆切がくる。というか、2か月間はほぼ放置されていて、執筆〆切の10日くらい前に「今回のテーマどうしますか?」という連絡が来て、1日くらいテーマを考えて先方に伝え、OKが出たら書き始めて数日で〆切、というサイクルである。もう少し早くリマインドしてもらうこともできるのだけれど、なんとなく1か月半くらいだらだらと「次はあんなことを書くのかもしれないなあ。」みたいなことを考え続けて、それがいい感じで煮詰められたギリギリのタイミングで「そろそろどうですか」という連絡が来る今のペース、わりとちょうどよいと思う。


ただしいつも楽勝で書いているわけではなくて比較的苦労する。1か月半かけて考えた内容は結局のところぼんやりとしか頭にないので、実際にキーボードを通じて書いてみないと、どっちに転がっていくかわからない。最初の数行が一番難しい。書いては読み、書いては読みして、目にうつる単語や漢字のバランスがおかしいとそれ以上先に進めず、しばらくは冒頭の部分をずっといじっている。いくらいじっても正解パターンが見えないが、しょうがないので少し先に進み、もう少し先に進み、まだまだ規定の文字数までにはだいぶあるなあ、くらいのところであらためて最初から読み直して、またチマチマ表現をいじったりする。序盤の三分の一くらいを書くのに一番時間をかけている。


その後、なにか急に「乗り越える」感覚があってあとはゲレンデをスキーで滑り降りるようなかんじで一気に書き進めて予定の文字数を少し超過する。確実に超過する。ここで文字数が足りないことはまずない。超過したままだとかっこわるいので、いったん最後まで書いたらまた最初に戻って読み直す。ただしここでいったん、少し時間をおく。


数時間くらい時間をおいてからあらためて読み直す。記憶がうっすらと抜けて「読者の気持ち」に少し近くなったタイミングで冒頭から読むと、さっきまでどっぷり浸かって直しまくっていた原稿のあちこちに、要らん表現というか、くどい表現というか、そういうのが必ず潜んでいるのでそういうところをバッサバッサと落としていく。同じことを別の場所に二回書いていたりもするのでそういうのも削る。そうやって削り込んでいくとだいたい文字数ちょうどの文章ができあがる。


最後にまた最初から読む。すると、「さっき思い付きたかった表現」みたいなのがぽろぽろ思い付く。これはおそらく、「自分で書き上げた文章に対するリアクション」みたいな効果なのだと思う。やはりぼくは基本的にはリアクションで書いていくほうが得意なのだ。自由テーマで自らアクションを起こすときにはとにかくエンジンがかかって動き始めるまですごく苦労する。しかしいったんほぼ完成品が出るとすかさずそれにリアクションできるようになるからおもしろいものである。たいていの人もきっとそうなのではないかと思う。ただしリアクションすればいいというものではない。


自分でいちから書いた文章をあとから読んで「こう直したほうがさらにいいだろう」というリアクションの半分くらいは、いわゆる「クソリプ」なのである。そんなこと言わなくても通じる。そんなにこねくり回さなくても文章はもうできている。ここで「良かれと思って」余計な手を入れたくなる自分をぐっと押しとどめ、数日寝かせてもう一度読んで、編集部に送る。だいたい、書き始めてから書き終わるまでが(間をあけつつの)1日、寝かせたりなんだかんだして正味で4日くらいかけてひとつの原稿を書き終える。


この書き方のキモはどこだろう? おそらく、「1か月半ぼんやり考えていること」だと思う。これがないとけっこう大変なんだよな。リアクション方式ならともかく。