2021年6月2日水曜日

現生人類の居住様式に関する仮説形成法

郵便振替の払込書。手書き。通信欄に、「入会申し込み希望」やら「会員番号」やらをチマチマ書き込まなければいけない。めんどくさい。

いまやほとんどの送金はネットバンクで、スマホかPCから行うようになっていて、ゆうちょ銀行であってもネットバンクからの入金は可能だ。払込書を使って送金する必要なんてほとんどない。でも、「通信欄への記載が必須」な手続きだけは、ぼくの使っているネットバンクでは対応ができない。

そんな旧態依然とした手続きがどこに残っているかって?

学会である。地方会である。学術集会である。

アカデミアには金がないから、郵便振替以外の送金方法を使っていないことが多い。みずほとか三井住友とか三菱UFJに口座開設して会員に入金してもらうことができるのは金をもっている団体だけだってことだ(聞いた話なので詳しくは知らないんだけれどどうやらそういうことらしい)。


日中にほかのスタッフに声をかけて、最寄りの郵便局まで歩いて行かないといけない。この手間はけっこうたいへんだ。

「夜中までやっている郵便局」があるのはわかっている。でも、「夜中まで仕事をしている中年男」なのでそのサポートはあまり意味がない。「土日に開いている郵便局」だってあるのは知っている。けれど、「土日に働いている病院人」なのでやっぱりあまり意味がない。季節は春。仕事中にごめんごめんと手刀を切りながら、正面玄関から堂々と病院を出て外へ繰り出す。残念ながらこれはとても気持ちのいいことである。


北海道にも梅雨が訪れるようになって10年くらい経つだろうか。一時は蝦夷梅雨(えぞつゆ)という言葉の認知度を高めるべく努力をしたりもしたけれど、毎年のように九州や山陽を襲う豪雨被害、内地に向かって急カーブする台風などを見ているうちに、めんつゆだかしろだしだか知らないがそんなのどっちでもいいわという気持ちになってくる。


ここまで書いて研修医カンファがはじまるところだ。カンファで30分過ごし、そのあと1時間くらい電話やメールの応対に追われた。そしてこのあとぼくは、払込取扱票を3枚握りしめて病院を飛び出して、陽光の中へと歩み出す。いまどき入金に郵便振替を使っている学会が3つもあることに身震いする。まったく困ったものだ。皮膚が喜びビタミンDが作られる。窓の大きな職場で働いているけれど、本来、人は屋外で生活するのがデフォルトなのではないだろうか。この体の喜びようを見れば、仮説はなかば実証されたようなものだ。