2021年8月16日月曜日

本日の推し活

宇都宮徹壱さんというフットボールライターかつ写真家の方にインタビューを受けた動画が公開された。


https://youtu.be/uscolCCypsU


ぼくがひたすらデュフフ的キモさで熱く「推し」を語っているので、好事家のみなさまはぜひご覧頂きたい。ここで推している本は『蹴日本紀行』という最新作だ。


『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』 https://tetsuichidou.stores.jp/items/60ec3e8e00790639e62ba55d


で、まあこの最新作はとてもいいのだけれど、ほかにも宇都宮さんの本にはいい本がいっぱいある。特に対談の中でも語った『ディナモ・フットボール』がシブくて好きだ。


https://www.amazon.co.jp/dp/4622033895/ref=cm_sw_r_tw_dp_NHHHDWBEPN6R89HW5WC5


なんとびっくり、ディナモ・フットボールはみすず書房から出た本なのである。みすず書房というと宗教、哲学、文化、医療などなど、専門領域をまたがって幅広くリゾームの根をのばすようなえげつない編集と高額で分厚く媚びない本作りで、学者が尊敬する版元トーナメント(妄想)の準決勝に余裕で勝ち上がる、マニア垂涎の出版社であるが、そこから出されたフットボール本。東欧の政治や文化とサッカーが編み込まれまくって、モノクロの文体がかもしだす幽玄さに若かりしころのぼくは取り付かれてしまった。



対談動画でも語っていることをもう少し詳しく書く。


ぼくは2007年頃、大学院を卒業する直前になって、いろいろやる気をなくしていた。4年も通ったが、とうとう研究はうまく行かなかった。いちばん最後に施したウェスタンブロットは、たしか結婚して間もない前の妻にマイクロピペットを握らせてやってもらった記憶がある(何をやっているのか)。当時のぼくにとって、大学院はもはや思い出づくりの場になり下がっていた。4年間の医学部博士課程のうち、後半の2年では教授が不在だった、もちろん大学院に入ったときにはそうなるなんて思ってもいなかったから不測の事態だったのである。当時の病理学講座が政局に巻き込まれ、教授が退官したあとに次の教授選が開催されるまでに3年を要した。その3年はぼくの大学院生活を直撃し、とうとう、卒業まで教授がいないという残念大学院生活になってしまった。スタッフが補充できず新たな研究費の獲得にも制限がかかるボス不在の講座で、ぼくはなぜか指導教官も不確定になっており、ほんとうに放り出されてしまっていて、研究テーマは迷走し、バイトでやっていた病理診断の腕だけがちまちまと上がっていく。毎日朝8時にデスクについて実験をやって失敗し、夜中の1時まで論文を読んで帰宅する生活が2年間続いて、心も体もぼろぼろになっていた。卒業しても教授はいないから人事もワークしておらず、大学に残ることなどもちろんできなかったので、近場の市中病院に温情をかけられ拾ってもらうかたちで就職することがかろうじて決まっていた(数奇なものだが、それが今の職場である)。

というわけで、卒業を目前にした2007年の正月明けにはもう残務処理に近いことしかしておらず、毎日のように論文を読みながら、それでも余った時間で2ちゃんねるのAA系SSサイトに入り浸り、自作のホームページを毎日更新しつつ(プロバイダを乗り換えた際にうっかりURLごと全部消したので今はもうないです)、スポーツナビなどのスポーツコラム記事を片っ端から読んでいた。そのときに出会ったのが宇都宮さんのとある記事だった。


https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/200811290013-spnavi


それまで宇都宮徹壱という名前はNumberやスポーツ新聞などの紙媒体で目にしており、やや珍しい字面だから記憶に残っていたのだけれど、毎日チェックしていたスポーツナビに見つけた見慣れた名前のライターの記事の、題材がSAPPORO開催のノルディックスキーだったのでぼくはあれっと思った。タイトルにはこうあった。

「これがサッカーの取材だったら…」

引き寄せられるように毎日この連載を読み、そしてぼくはここから宇都宮さんの記事を特に選んで追いかけるようになった。印象的だったのは、彼がワールドカップなどの大きな大会の記事を書いた直後に、JFLや社会人リーグ、地域リーグなどの(Jリーグですらないような)地方のフットボールを取材した記事をほとんど同時期に出していたことだ。


(海外と地方の記事が入り乱れるスポーツナビの宇都宮さんの記事一覧)


なんとも守備範囲が広い人だなあと思い、その切り口や書き方、「フットボールのとらえかた」自体に魅せられて、気づけば書籍も買いそろえ(サッカーおくのほそ道とかすごくいいです)、Twitterもフォローし……



とやってかれこれ14年、インタビューを受けることになってしまった。水曜どうでしょうのD陣ふたりと対談させられたときも思ったことだが、好きでおいかけていた人と直接話す機会を与えられると必ずキョドってしまう。「光栄です」以外の言葉が出てこなくなる。今回もたぶんぼくは寡黙におどおどするんだろうなーと思っていたがもちろんそんなことはなくて死ぬほど喋り倒して、最初は「記事化してちょっとYouTubeにも載せるかもしれません」くらいだったのが、結果的にYouTube動画5本でインタビューをほぼ全てフル公開、というかたちになった。まったくオタクは罪深い。


じゃ、くり返しておく。



宇都宮徹壱さんというフットボールライターかつ写真家の方にインタビューを受けた動画が公開された。


https://youtu.be/uscolCCypsU


ぼくがひたすらデュフフ的キモさで熱く「推し」を語っているので好事家のみなさまはぜひご覧頂きたい。ここで推している本は『蹴日本紀行』という最新作だ。


『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』 https://tetsuichidou.stores.jp/items/60ec3e8e00790639e62ba55d