2021年12月13日月曜日

病理の話(606) 人体を守る壁のオプション装備

町があり、善良な人びとが暮らしている。そこに敵軍が攻めてきたとき、敵を町の外で迎え撃つことができれば、町を壊さなくてすむ。しかし、町の中に入り込まれてしまうと、家も人も被害を受けざるをえない。

おなじことが人体にも言える。からだを守るために大事なのは、まず、敵を体内に入れないことだ。

では、外から入ってくる「敵」にはどんなものがあり、それに対して人体はどう対処しているか?


1.物理的な刺激。ボールが飛んできてぶつかる、歩いていて木の枝に刺さる、こういったトラブルに備えて、人間はわりとしっかりした防壁である皮フを持つ(つまんでも破けないってすごいことだよ)。さらに、場所によっては「頭蓋骨」のように、皮フだけに頼らずしっかりした骨で身を守る。まずは外側の壁で守るというのが大切だ。水分や油分などもはねかえすぞ。


2.ケミカルな刺激。衝撃はさほど大きくなくても、酸などがかかると人体を守る壁はとけてしまうリスクがある。だから皮フには「そっと・ぺとっとくっついたものを感じるしくみ」も付ける。この点、いわゆる「城壁」よりも高度である。


3.温度の違いによる刺激。異常に熱いものや逆に冷たすぎるものは体にとって害である。だから、壁には「くっついたかな? と感じる能力」だけではなく、「くっついたものが熱いか冷たいか」を感じるしくみも付ける。オプション装備が多彩である。


4.微生物の侵入。寄生虫とか。菌とか。ウイルスとか。こういったものは、そっとやってくるし、熱くも寒くもない。ではどうやってこいつらをはねのける? ……皮フを内側から新陳代謝させて、定期的にはがれおちるようにするのだ。こ、これは高度である。2と3のことも考えて欲しい、この壁にはセンサーが内蔵されているんだぞ。かなり高度なしくみを持っているんだ。その上で、表面がはがれて、でも穴は空かないという……。



どうだろう、人体の外側の「壁」は、壁ということばで軽く表現するにはエグいくらいの機能を持っている。たとえばマイホームの壁が経年劣化しないように、じわじわと外側がはがれて再生したら便利だろうが、そんなことを達成できた建築会社はひとつとしてない。大和ホームもタマホームも壁を新陳代謝させることはできないのだ。


ていうか冷静にかんがえて、人間の寿命が80歳を越えている今、「一戸建ての家」よりも人のほうがふつうに長持ちするもんな。人ってすごいな。